ヴァン・ヘルシング  (ユニバーサル:スティーヴン・ソマーズ 監督)

 ヴァン・ヘルシングと言えば、ハマー・プロの「ドラキュラ」シリーズで、ドラキュラの宿敵だったキャラクター。ドラキュラがクリストファー・リーで、ヘルシングがピーター・カッシングという名コンビで数本作られており、懐かしいキャラである。今回はそのヘルシングを主人公にしているが、ブラム・ストーカーの原作や前述のシリーズでは、ヘルシングは老年の教授だったはず。本作ではヒュー・ジャックマン扮するヘルシングはかなり若いし色男?である。黒っぽいコスチュームにツバ広帽子といういでたちは、なんだか菊池秀行の「吸血鬼(バンパイア)ハンター・D」を彷彿とさせる(川尻善昭監督のアニメも参考にしているのでは?)。
 お話の方も、ドラキュラだけでなく、フランケンシュタインの怪物、狼男に、なんとまあジキル博士とハイドまで登場するのには笑った(それぞれ原作者が違うでしょうが(笑))。まあ「フレディVSジェイソン」だとか「エイリアンVSプレデター」とか、別々の映画のキャラクターを組み合わせるというのは最近のハリウッドの傾向のようだし(アラン・クォーターメインやドリアン・グレイやネモ船長がチームを組む「リーグ・オブ・レジェンド」というのもあった。そう言えばこれにもジキルとハイドが登場していた(笑))、悪く言えば段々ネタ切れになって来たのか…という気がする。
 しかし、観てみると、結構面白かった。監督が「ハムナプトラ」シリーズのスティーヴン・ソマーズという事もあるが(「ハムナプトラ」も、原題(The Mummy)が示すように、ユニバーサル・ホラーの「ミイラ再生」のリメイク)、いろいろと工夫を凝らしていて飽きさせない。冒頭、フランケンシュタインの怪物の創造、そして燃える風車に怪物が閉じ込められる展開までは、ジェームズ・ホエール監督の古典的名作「フランケンシュタイン」(31)へのリスペクトであり(わざわざモノクロにしている凝り様)、昔のホラー映画ファンには楽しい作りになっている。ILM担当のCGをフルに使ったSFXもよく出来ているし、ドラキュラ伯爵がなかなかのキャラ立ちで敵役として申し分なし。ヘルシングが実はガブリエルと呼ばれる数奇な過去(未見の方の為に詳しくは書かない)を持っている…という、原作者のストーカーが聞いたらひっくり返るキャラクターになっているのにはこちらも驚いたが、やはり数百年生きているドラキュラと宿命の対決を繰り広げるには、これもアリかな…と納得させられる。ラストでもまだヘルシングの過去ははっきり描かれておらず、続編がありそうな雰囲気である。肩の凝らない娯楽作としても及第だが、古い映画を観ている映画ファンであればなお楽しめるのではないだろうか。