スクール・ウォーズ HERO  (松竹:関本 郁夫 監督)

 同名のテレビドラマでも人気を博し、NHKのプロジェクトXでも取り上げられた、熱血教師が荒れた高校の落ちこぼれ生徒達を鍛え、高校ラグビー・チームを日本一に導いた感動の実話の映画化。
 公開されるまでは、やや手厳しい意見が多かったし、私も何で今さら、スポ根ドラマ(それもテレビで手垢のついたもの)をわざわざ映画館でやるのか…と触手が動かなかった。それでも観る気になったのは、監督が関本郁夫だったからである。
 関本監督は、デビュー当時から私のご贔屓監督である。「好色元禄(秘)物語」、「天使の欲望」などは傑作だし、「東雲楼・女の乱」、「およう」なども手堅い出来であった。アクション演出にも定評があって、深作欣二の「新仁義なき戦い・組長の首」ではカーチェイス・シーンの演出を第2班監督として任されたくらいである。本作についても、「予想外に面白い」という声も聞こえてきたので、ちょっと期待したくなったのである。―結果は、観て大正解。感動した!。
 映画は冒頭から、まさに浪花節。主人公山上(照英)が、荒れる高校の校長(里見浩太朗)に教師として誘われるシーンからして、男が男の信義にほだされる任侠映画そのもの。不良どもの荒れっぷりも、昔東映の「恐怖女子高校」シリーズ(関本も脚本に参加)で観たことのあるようなシーンの連続(笑)。最初は冷ややかに見ていた同僚教師たちが、やがて山上の熱意にうたれ、一緒に行動し始めるという展開や、反撥していた生徒たちが山上の熱血指導に、他の教師からは得られなかった情熱を感じ取り、どんどん感化されてラグビーにのめり込んで行くあたりも、まさに男が男に惚れる任侠映画タッチである。強豪との試合にボロ負けした生徒たちが「俺たちを鍛えてくれ」と涙ながらに訴え、山上も泣きながら彼らを殴るシーンや、白血病で死んで行く仲間のエピソードもあったりと、あざといくらいに泣かせる場面がいっぱい。クサいと言えばクサいのだが、山上そのままに、まさに無骨にストレートにドラマを引っ張って行く関本監督の熱血演出は、この映画にうってつけ。ラグビーの試合シーンはなかなかの迫力。かなり特訓を積んだようで、激しく移動するカメラに、若い俳優たちが本当に体をぶつけ合うダイナミックな試合シーンを見ているだけでも感動する。ラストの、前年ボロ負けした相手との試合で、最後の最後で逆転勝利するクライマックスは、これが実話とは信じられないくらいに(多少は脚色もあるが)ドラマチックで感動的である。何よりも、私が大好きな、“最初は完敗してヘコんだダメチームが、特訓の末に逆転勝利する”という典型的な正しい娯楽映画のパターンを踏んでいるのが素晴らしい。久しぶりに爽やかな涙を流させてもらった。関本監督、よくやってくれました。ストレートな感動ドラマがお好きな方には是非おススメしたい、これは思わぬ拾い物の佳作である。