マッハ!!!!!!!!   (タイ:プラッチャヤー・ピンゲーオ 監督)

 うーん、楽しい。久しぶりに理屈ぬきに楽しい映画を観させてもらった。盗まれた、村の至宝である仏像の首を取り戻すべく、一人の若者が都会にやって来て悪党たちと闘う・・・という一応のストーリーはあるが、この映画はストーリーの辻褄とか難点などはどうでもよく、ひたすら主人公の人間離れしたアクション技を堪能し、スカッとした気分で劇場を出る…ただそれだけのためにある映画―と言っていい。宣伝キャッチコピーが笑わせてくれる。「CGは使いません。ワイヤーは使いません。スタントマンを使いません。早回しは使いません」…。このコピーは、とにかく何かと言うとCGやワイヤーを使い過ぎの最近のアクション映画への皮肉にもなっており、こういうアクションの(と言うより、“活動大写真”の)原点に帰った作品が作られるのは喜ばしい。それだけで点数を甘くしてあげたいほどだ。
 主演のトニー・ジャーの、実際に体を張った数々のアクションは本当に素晴らしい(ブルース・リーのデビュー当時を彷彿とさせる)。中には輸送中のガラスの狭い隙間を飛び抜けたりといった、こんな事もできるよ…的な、アクロバティックなシーンもあるが、これはご愛嬌。トゥクトゥクというオート三輪を使ったカーチェイスまで飛び出し、とにかくこれでもか…とつるべ打ちに繰り出すサービス・シーンの連続には心が踊った。映画の黎明期(サイレント時代)は、チャップリンもロイドもキートンも、阪妻もアラカンも、みんな体をフルに使ってスタントマンも使わず、ワイヤーもなしで自分で動きまくっていたはずなのだ。CGやワイヤーは、逆に映画の原初的な面白さを奪ってしまったのかも知れない。そんな事まで考えさせてくれた、これはまさしく“本物”のアクション・エンタティンメントと言えるだろう。アクション映画ファンは必見である。