トロイ   (ワーナー:ウォルフガング・ペーターゼン 監督)

 ホメロスの叙事詩「イリアス」を下敷きにしたトロイ戦争の物語。1955年に、ロバート・ワイズ監督により作られた「トロイのヘレン」も同じ題材。今回はCGを多用し、夥しい数のエキストラも使ってスケールの大きい作品に仕上がっている。・・・が、
 確かに壮大感はある。CGもうまく使われている。しかし、面白くない。なんかよく出来たテレビ・ゲームを見ている感じである。人間味が感じられないのである。CG全盛になって、本物の物凄い数の兵士が激突するシーンですらCGを見ているような錯覚を覚えてしまうのである。それぞれの俳優も人間味が薄い。何より戦争の原因を作ったパリス王子(オーランド・ブルーム)がまったくのデクの棒で、こんなアホのためにどれだけの人間が命を落としたんだ…と突っ込みたくなる(それでラストはスタコラサッサと逃げてしまうとは…)。同じようにハリウッドの物量作戦と膨大な数のエキストラを使った「ベン・ハー」(ウイリアム・ワイラー監督)とか、「スパルタカス」(スタンリー・キューブリック監督)が、いずれも人間ドラマとしても見事で感動した記憶があるだけに、余計本作の人間ドラマとしての希薄さが目立つのである。「Uボート」とか「ザ・シークレット・サービス」などの骨太の佳作を撮ったペーターゼン監督も、ただのハリウッド御用監督になってしまったのだろうか。ハリウッド映画は金をかけた分だけ、ますます大味で図体だけでっかいマンモスのような存在になりつつある。まるで金をかけてスターを集めて、あげくに面白みのないチームになってしまったプロ野球の巨人軍を見ているかのようである。…それでも客は集まるんだろうけどね。