イン・アメリカ 三つの小さな願いごと  (20世紀フォックス:ジム・シェリダン 監督)

 「マイ・レフト・フット」などで知られるアイルランド出身のジム・シェリダン監督の自伝的映画。故国アイルランドからアメリカにやって来た、娘二人を含む4人家族が、さまざま困難を乗り越えて生きて行く姿を感動的に描く。脚本には実の娘二人(ナオミとカーステン)も参加し、いくつかのエピソードはシェリダン一家の実体験に近いらしい。小さな息子を病で死なせた過去を持ち、仕事は見つからず、ハーレムのボロアパートで貧しい生活を送りながらも一生懸命生きる家族。やがて妻が妊娠し、入院費に困った家族にある奇跡が訪れる・・・。
 低予算の小品であり、有名俳優も出ておらず、地味な物語である為か観客の入りもよくないようだ。でも、見終わってなんとなく心が温かくなる、素敵な作品である。随所に社会問題(貧困、差別、エイズ等)も盛り込みながらも、タイトルにあるように、娘が、神様が3つだけ願いごとを聞いてくれると信じており、不思議と願った事が実現するといった、全体にファンタジー的な要素も散りばめた作り方がちょっと面白い。自伝でありながら、社会派的テーマも持ち、かつファンタジーでもあるという欲張った構成でありながらも、全体としてスッキリまとまっているのはシェリダン監督の腕だろう。何より、派手なSFXやドンパチ・アクションばかりが目立つアメリカ映画の中で、こうした地味だけど清清しい映画に出会うとホッとする(ただし、製作資金はアメリカだが実質的にはイギリス映画)。妻を演じたサマンサ・モートンが好演(アカデミー主演女優賞ノミネート)。二人の娘役(サラ&エマ・ボルジャー)は実際に姉妹だそうだ。この二人が実にかわいい、自然な演技を見せる。この二人の演技を見るだけでも値打ちあり。