クローサー   (ソニー・ピクチャーズ・アジア:コーリー・ユン 監督)

 香港製、ワイヤー・スタントを駆使した理屈抜きの痛快アクション・エンタティンメント。とにかく、強い美女がカンフーとガンを使って大活躍し、しかもハイテク機器も利用し(なんと監視用人工衛星まで活用するのだ)、カーアクションもあり、ラストの対決では日本刀を使っての大チャンバラ活劇まであり(相手の悪役は懐かしや、'70年代の香港カンフー・アクションで活躍していた倉田保昭)、もう、ありとあらゆるアクションの要素がてんこ盛り。しかも「チャーリーズ・エンジェル」から「マトリックス」、その他のハリウッド映画からもおいしい所をいただいており、その上どうやら「マトリックス」の元ネタ、「攻殻機動隊 Ghost in the Shell」からの引用もある(ビルの屋上からの背面落下シーン等)。しかしこうした意識的な引用・パクリを差し引いても、この映画が楽しいのは、スー・チー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モクという香港を代表するアクション女優の、体を張ったアクション・シーンの素晴らしさで、これはいくらSFXが進化したハリウッドでも真似の出来ない点である。さすが肉体アクションの本家、香港だけのことはある。それと特筆しておきたいのは、本年で57歳!になる倉田保昭の、年齢を感じさせないアクションの切れの良さである。わが国で肉体的アクションがほとんど作られなくなった現在、倉田の姿もスクリーンでほとんど目にかかる事はなくなったが、千葉真一ともども、彼らの活躍の場がない日本の現状を憂えると同時に、いまだ香港映画で悪役ながらもアクション俳優として頑張る倉田の勇姿にちょっぴり胸が熱くなった。その点をおマケして採点はやや甘く…。