フレイルティー−妄執− (パラマウント:ビル・パクストン 監督)

 「ツイスター」「タイタニック」等の出演作で知られる俳優のビル・パクストンが、初めて監督に挑戦した作品。しかし経歴を見ると、高校時代から8mmを撮ったり、卒業後ロジャー・コーマンの元で美術監督(「ビッグ・バッド・ママ」に参加)をやったりと、元々演出志望であったらしい。
 で、この作品、パクストン自身のアイデアによるもので、お話は、猟奇連続殺人事件が続くテキサスの町の警察に、一人の男(マシュー・マコノヒー)が現われ、殺人鬼の正体を知っていると告白を始める。その内容は、聞くもおぞましいものだった…というもの。見ていない人の為にくわしくは言えないが、とにかくコワい映画である。かと言ってショック場面や流血シーンはほとんどない。
それでいてコワいのは、表面的にはごく普通の、子供思いの父親に見える男(パクストン自身が扮している)が、次第に狂気の一面を増幅して行くプロセスに、“人間が狂う”とはこういう事なのか…と思わせる凄みがあるからである。しかもラストには驚愕のドンデン返しもある。うまい!と唸ってしまった(あー、結構言ってしまったかな)。まあ、ネタはバラしていませんので、本当のスリラーが好きな人にはおススメです。同じく俳優から監督になったクリント・イーストウッドの監督デビュー作「恐怖のメロディ」も、結構コワかった。パクストンは、ひょっとしたら第二のイーストウッド監督を目指しているのかも知れない。次作が大いに期待できる、注目の新人監督の誕生である。