ザ・リング  (ドリームワークス:ゴア・ヴァービンスキー 監督)

 我が国ホラー映画の傑作として、大ヒットした映画「リング」(中田秀夫監督)のアメリカ版リメイク。私も日本版は傑作だと思っている。これをどう料理したか楽しみだったが、出来上がった本作は想像以上にほとんど中田監督版をそのまま再現している。ここまでオリジナルそのまんまのリメイクはあまり見た事がない。従ってコワいシーンもほぼ同じ。では拍子抜けしたかと言うとそうでもない。名手リック・ベイカー(「キング・コング」「猿の惑星」等)による特殊メイクの死に顔が登場する所はさすがにドキッとさせられる。音響とショック演出で怖がらせるお得意の手法をうまく使っており、アメリカでヒットしているのもよく分かる。残念なのは呪いのビデオ映像が鮮明過ぎる点と、映像の意味もちゃんと説明できるようになっている点。この映像は貞子(あちら版ではサマラ)の念写によるものだから、日本版のようにザラザラ荒れてて、かつ得体の知れない不気味なイメージを押し出した方が正しいと思う。ラストのテレビから抜け出したサマラが、日本版と同じストレートな黒髪なのも違和感がある。あの黒髪の怖さは日本の怪談映画の伝統の流れにあるから怖いので、西洋人があんな髪なのは少しヘンである。・・・まあ結論から言って、怖さも映画としての完成度も、中田秀夫監督作品がやはり数段上であった…というのが結論である。しかし中田版を見ていなかったら、これは十分怖いホラー映画の秀作であると言えるのではないか。