サイン  (タッチストーン:M・ナイト・シャマラン 監督)

 (ややネタバレがあります。ストーリーには触れてませんが、映画を見てからの方が良いと思いますので…)
 M・ナイト・シャマランという監督は幸せな人である。「シックス・センス」というアッと言わせた作品が大ヒットしたおかげで、以後何を作っても期待され、内容にかかわらず大ヒットを記録している。いわば、野球で凄い変化球を1球投げて三振を取ったおかげで、以後は普通の球を投げても空振りしてくれるようなものである。「アンブレイカブル」は、主人公が死なないのは、まさか○○○者じゃないだろうな…と思ったらホントにその通りだったという身も蓋もない作品だったが、本作もミステリーサークルが思わせぶりに登場し、まさか○○人のせいだと言うんじゃないでしょうね…と思ったら、今度もその通りだった…という作品である(笑)。いかにも超大作のように装っているが、内容は昔懐かしい'50年代B級SF映画のテイストである。それで、ダマされた…と怒っている人が多いが、私はこれは、シャマラン監督が確信犯的にダマそうとした(笑)作品だと思う。監督は一言も「ラストにどんでん返しがあります」なんて言ってないのに、観客の方が勝手に「何か凄いどんでん返しがあるのじゃないか」「謎解き超大作か」と思い込んで、結局は思わせぶりなミスディレクションで、観客はまんまと引っかかってしまったわけであるが、それで怒るのは筋が違うのである。悪く言えば詐欺だが、「スティング」のように、だます方がうまいので、だまされる方が悪いと思う。私もだまされた口だが、でも「してやられたな」と感心してしまった。シャマラン監督は、現代の香具師(誉め言葉です)と言えるのではないだろうか。…でも、次はもう引っかからないだろう…………と思わせておいて、今度はどんでん返しをやるかも知れない(笑)。まったく、食えない人ですね、もう…(と、これもこっちが勝手に思ってるだけか(笑))。なお、ヒッチコックの「鳥」が巧妙に引用(パロディ?)されており、これも楽しい。