OUT (20世紀フォックス:平山 秀幸 監督)
桐野夏生のベストセラー・サスペンスの映画化。宝島社の「このミステリーがすごい」でも'98年度のベスト1になった傑作である。無論私は読んでいる。ただかなりショッキングな描写があるので、映像化は難しいと思った。1昨年にはテレビドラマ化され、これも私は見ている。お断りしておくと、テレビドラマはほとんどロクなものがないので私はめったに見ない。これは原作をどう映像化したかという興味で見たのだが、原作を忠実にドラマ化しており、思ったよりよく出来ていた。田中美佐子(雅子)、渡辺えり子(師匠)、柄本明(佐竹)といった役者たちもなかなか良かった。
さて、映画では2時間という時間的制約もあり、原作をそのまま映像化は出来ない。そこは鄭義信(脚本)+平山秀幸(監督)という傑作『愛を乞うひと』コンビであるだけに、余計な部分はバッサリカットして整理し、そしてなんとなんと!笑えるシーンが多く、ラストは原作と大幅に変えてある。
物語は、弁当工場でパートで働く四人の女たちが、うちの一人が夫を殺した事から、何の希望もない日常生活からOUTして行く…というもので、はっきり言って現実味はない(特に、ブローカーから死体解体ビジネスを請負うあたり)。即ち、これは一種のファンタジーとして向き合わないと面白さを読み間違えることとなる。四人がそれぞれ、リストラと家庭崩壊、老人介護、サラ金地獄、家庭内暴力と、日本の家庭に起きている諸問題を均等に抱えている点も見事に図式的である。平山演出は、死体処理シーンをブラック・ユーモア的に描き、現実感をより希薄にさせ、さらに雅子(原田美枝子)たちがやがて男たちを翻弄し、軽やかにOUTして行くさまを快テンポで描く。師匠(倍賞美津子)が雅子に問い掛ける言葉「あんた、夢を持ってるかい」が泣かせる。原作では次々と仲間や家族が死んで行き、最後も(主人公がしたたかに生き延びるという点は同じだが)やや陰惨な結末であるのに対し、こちらはあっけらかんとした結末である。原作ファンから見れば不満の残る描き方だろうが、爽快なファンタジーという本作のスタンスから見れば、これも納得できるのである。“女たちよ、しがらみを捨てて軽やかに飛べ”というメッセージに満ちたこれは快作である。
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