ハッシュ! (シグロ:橋口 亮輔 監督)

 自らゲイである事を公表し、作る作品もすべてゲイが主人公であるという、ちょっと日本では珍しい監督の新作。しかし「二十歳の微熱」「渚のシンドバッド」と、作る度に力をつけて来ており、本作はゲイに興味がない人にも面白い(前2作も見ているが、私にはちょっとシンドかった)。なお、本作は地方先行公開により、昨年のキネ旬ベストテン2位に入選し、片岡礼子が主演女優賞を受賞している。
 お話は、ゲイの男二人の間に、男とのセックスだけの生活に疲れた女(片岡)が割り込み、彼らから精子を譲り受けて子供を作ろうとする…という、かなりひねった展開。これは、まったく新しい形の、男と女の(と言うより人間同士の)家族生活の模索の映画であり、テーマとしては現代的で面白い。しかも、それを知った周囲の人間たちのリアクション、それに毅然と立ち向かう主人公たちの行動や発言も自然な感じで見ごたえがある。大阪弁でまくし立てる秋野暢子がうまい。笑いどころや緩急をつけた演出が快調で、橋口監督はうまくなったと思う。ラストの後の、彼らの新生活も見たい。続編は出来ないものでしょうか?