マルホランド・ドライブ (米/仏:デヴィッド・リンチ 監督)

 「ブルー・ベルベット」「ツィン・ピークス」などの頭がパニックになる(笑)怪作を作って来たデヴィッド・リンチの新作。前作では「ストレイト・ストーリー」という、実にまっとうな(?)感動作を監督しただけに、もうフツーの作家に転向した…のかな…と思っていたらどっこい、またまた「ツィン・ピークス」にも匹敵する、謎だらけの妖しい映画をこさえてしまった。うーん、やっぱり怪人リンチ、健在であった(笑)。
 ハリウッドのマルホランド・ドライブを走行中の車の中で、一人の女が銃で狙われる。ところが暴走して来た車が衝突し、そのショックで記憶を失った女がさまよい込んだ邸宅に住む女優志願の女性、ベティが彼女(記憶喪失の女はベティの部屋に貼ってあった「ギルダ」のポスターを見て、主演女優リタ・ヘイワースの名前から、自分をリタと名乗る)を助け、リタの記憶を取り戻す手がかりを求めて二人で調査を開始する。・・・と、一応ストーリーは存在するが、中ほどでリタの自宅らしい家で腐乱死体を見つけるあたりから、お話はどんどん迷宮に紛れ込んで行く。「ツィン・ピークス」に登場した、小人やら赤いカーテンの部屋なんかも出て来て、とうとうどれが現実で、どれが夢なのか分からなくなり、観客はパニックになってしまう。まさにリンチ・ワールド。ブルーの鍵(冒頭の刑事も持っていたような?)やブルーの箱も謎である。この映画を一発で理解できる人なんてまずいないだろう。多分リンチ自身にも分かっていないと思う(笑)。しかしリンチ映画の魅力は、話なんかどうでもよくて、その目くるめく謎の世界に、小気味良く酔える事にある。ドラッグでトリップするようなものですね。「ツィン・ピークス」にハマった人は、この映画にもハマるだろう。1回見ただけでは分からず、もう一度見たくなる(ご丁寧に、半券を呈示したら1,000円で見れるそうだ)。ちゃんとしたストーリーのある映画を求める人にはお薦めできないが、リンチ映画に染まった事のある人なら見て損はない。私も半券でもう一度見に行こうかな。