カタクリ家の幸福   (松竹:三池 崇史 監督)

 日本一の多作!を誇る三池崇史監督が、またしてもやってくれました。とにかくこれは楽しい、笑える快(怪!)作です。
 ストーリーは、韓国映画「クワイエット・ファミリー」が元になっているが、三池崇史にかかればなんの、原型はほとんど跡をとどめず、歌と踊りの楽しいミュージカルが出来上がってしまった。脚本の山岸きくみが書いた詩に、歌謡界の大御所、馬飼野康二が曲をつけ、演歌からポップス、サンバ調といろんなタイプの曲が登場する。しかも振り付けもワイヤーで空を飛んだり、マイケル・ジャクソン調からインド・マサラ・ムービー調、はたまた宝塚レビュー風になったかと思えば、沢田研二と松坂慶子のデュエットではなんと!ミラーボールが輝き、まるっきりカラオケ・スナック・ムードになってしまう(ご丁寧にレーザー・カラオケ並みの色変わりテロップまで流れるのだ(笑))。この、登場人物がみんな歌って踊り、そうしているうちに難問も何となく解決して行く・・・という展開は、マキノ雅弘が戦前に監督した和製ミュージカルの傑作「鴛鴦歌合戦」を思い起こさせる。
 はっきり言って、展開はデタラメである。しかし三池監督は「デタラメで何が悪い」と開き直っている。その開き直りが逆に爽快である。しかし、ムチャクチャやっているようで、実は三池作品はいつも映像的には凝りに凝っている(CGを日本で一番効果的に使用しているのも彼である)。アクション・スペクタクル・シーンになると、クレイ(粘土)・アニメになって、登場人物そっくりの粘土人形が大アクションを展開するのだが、これも(予算がないのを逆手に取って)「どうせトリックだと分かるような映像を出すくらいなら、初めからウソの映像で大暴れしてやろう」という発想である。さすが、「DOA」で地球をブッ壊してしまった三池崇史ならではである。
 とにかく、ハッピーな気分になりたい人にはおススメである。「殺し屋1」に続いて、三池崇史は絶好調である。スゴい監督である。なお、冒頭、ペンションで最初に自殺する男を演じているのは「漂流街」でも怪演した、評論家の塩田時敏氏である(そう言えば、「漂流街」の埼玉県戸田市に登場した「ポンカレー」の看板がここにも…(笑))。