千年の恋/ひかる源氏物語 (東映:堀川 とんこう 監督)

 この映画のスタッフを聞いた時、実はこれはヤバイと感じました。…企画に岡田裕介、そして脚本に早坂暁の名前を見たからです。このコンビ、あの悪名高い「北京原人」のコンビ(笑)です。おまけに主演が吉永小百合…。岡田=吉永コンビと言えば「天国の大罪」「霧の子午線」など、こちらも私の毎年のワーストテン作品の常連。多分これもワーストテン候補になるんじゃないかと危惧しておりました。ま、先入観は禁物ですから(万一、傑作にならないとも限らない?)、できるだけ白紙で見るよう心がけました。が、しかし・・・
 アイデアとしては悪くありません。光源氏の物語と、作者の紫式部の物語が並行して進む…というのも、洋画の力作でも例があります。加えて、西岡善信さんの美術が本格的でしっかりしていますので、これはひょっとしたら・・・と期待したのですが・・・。
 のっけから式部の弟が「いけません、姉さん、不倫の物語なんて…」てなセリフを言った時には、私は椅子からズリ落ちそうになりましたよ。・・・“不倫”なんて、現代の言葉でしょうが。せめて“不義密通”くらいにしてもらわないと…(これとて平安時代に使われてたかどうか…)。他にも、あまりに軽い現代言葉が頻発…。歩き方も軽すぎて、とても王朝貴族の歩き方に見えません。松田聖子が歌いながら空を飛ぶ…に至ってはもう口あんぐり…。熱帯魚が泳ぐ水槽?での遊泳シーンも場内失笑の連続…。これはどういう事でしょう?。ひょっとして堀川監督、古典を素材にした和製ミュージカル・ファンタジーをやりたかったのか? にしても中途半端過ぎる。これ、簡単そうで難しいものですよ。やはりバズ・ラーマン(「ムーラン・ルージュ」)くらいに、確信的なポリシーがないと成功しません。それならもっと吉永以下みんなが歌いだすとか、お月さまも歌うとか(笑)徹底すべきでしょう。そこまでやれば楽しくてまだ見れたかも知れません。それが出来ないなら、昔の長谷川一夫や市川雷蔵主演の大映作品(後者の美術も今回と同じ西岡善信氏)くらいの、普通(?)の格調高いドラマにもって行くべきでしょう。要するに、どういうポリシーで作るかが一貫せず、いろんな人がワイワイ口出しして、全体として整合しない怪作?が出来上がってしまったのではないでしょうか。原因は一言、プロデューサー不在に尽きます(製作委員会方式の為、プロデューサーがやたら多い。反面、本来なら監督と並んで記載されるべきプロデューサー名が、ポスター、チラシのどこにもない!責任者は誰だ!)。
 こう思っているの、私だけかと思ったら、ネット上のレビューとか掲示板でもやっぱり否定的意見が圧倒的に多い。キネ旬でも、立川志らく師匠は「これは喜劇だ」と言うし、山根貞男さんはクソミソにコキおろしてるし、みんな同じこと思ってるようですね。
 せっかくの東映創立50周年記念作品だというのに、このヒドさ(あ、ディズニー100周年記念映画もヒドかったですね)。それでも、客の入りはまあまあなので、反省はしないんでしょうか。しかし、この問題はじわじわボデーブローが効いてくるような気がするのですが…。     (