ヤング・ブラッド   (ピーター・ハイアムズ 監督)

 「マトリックス」の成功以来、アメリカ映画にやたらとワイヤー・スタントを多用したアクション映画が目立つが、今度はとうとう17世紀のフランスを舞台にした、古典文学作品(!)にまで登場することとなった。原作はアレクサンドル・デュマの有名な「三銃士」。リチャード・レスター作品を始め何度も映画化されているが、いくらチャンバラ・シーンもあるアクションだとは言え、香港ワイヤー・アクションと融合させるとは、ちょっとやりすぎである。おまけに、中盤では「駅馬車」ふうチェイスに「レイダース・失われたアーク」のスタントまで取り込んでいる。楽しむより先に、私はあきれて開いた口がふさがらなくなってしまった。レスリー・ニールセンやメル・ブルックスあたりのパロディ作品じゃあるまいし…、これでは大デュマに対して失礼じゃないか。
 まあ今どき「三銃士」では、若い観客が入らないと思うのは分かるが・・・それにしてもここまでふざける(私にはフザケているとしか見えない)必要はない。そのうえ、アクション・シーンになるとスタントマンの吹き替えなのが丸分かりで興ざめである(顔は見えなくなるし、体格まで明らかに違う)。それを隠すためか、画面全体が照明不足でやたら暗い。悪役のティム・ロスとダルタニアンとの対決はハシゴも使ったアクロバット・アクションを披露してくれ、そのシーンだけなら迫力があるが、でもあのティム・ロスの悪役、そんなに身が軽かったの?(笑)と突っ込みたくなってしまう(ちなみにそのスタントを演じているのが香港から呼んだワイヤー・スタント・コレオグラファーも兼ねるシャン・シンシン)。
 まあそんなわけで、一言で言うなら、あの「三銃士」をテレビ・ゲーム化したような作品である・・・と言えば分かりやすいだろう。それでも面白そう…と思う方は見てもいいだろうが、デュマの原作に親しんだ方は見ない方がいいでしょう…と忠告しておく。監督は「カプリコン1」という小粋なサスペンスの佳作で知られるピーター・ハイアムス。彼のファンの方も、見ない方がいいと思いますよ。