贅沢な骨     (行定 勲 監督)

 「GO」で今注目の行定勲が、その前に撮った作品。主人公は売春婦を職業とするミヤコ(麻生久美子)。彼女はサキコ(つぐみ)という女性と同居している。サキコは幼い頃に性的に傷ついた経験があるらしい。ある日、ミヤコは新谷と名乗る男(永瀬正敏)を客として取る。ミヤコと新谷は互いに惹かれ合うものを感じ、何度も会ううち、やがて新谷はサキコにも惹かれ、奇妙な三角関係が生まれる。が、それによって、安定していたかのような2人の女の間のバランスがもろくも崩れて行く・・・。
 行定勲の演出は、三人の男女の行動と心理を、じっくり丁寧に描き好感が持てる(「GO」とはうって変わって正攻法である)。3人の俳優はそれぞれに好演。とくにつぐみがいい。精神的に追い詰められて行く心の不安定さを巧みに表現している。使用していないミキサーのガラス瓶の中に3匹の金魚を飼っているのだが(ポスターも、金魚を入れたミキサー瓶が中心である)、いつ心が壊れてミキサーのスイッチを入れてしまわないか、こちらまでハラハラして来る。これはまた作品のテーマをも象徴しているのだろう。
 大胆に省略したラストのシークェンスの演出もいい。突然に崩れてしまう3人の関係。そして、骨・・・。
 ミニシアター系ヨーロッパ映画を見たような余韻が残る佳作である。行定勲−ただものではない。次回作はさらに注目である。