ELECTRIC DRAGON 80000V  (サンセント・シネマワークス:石井 聰亙 監督)

 昨年、「五条霊戦記」で久方ぶりにアクションに復帰した、奇才・石井聰亙監督作品。製作会社も、主演二人(浅野忠信、永瀬正敏)も「五条−」と同じ(但し完成は「五条−」より前だった)。もし、「爆裂都市/BURST CITY」などの、初期の石井映画ファンだったら、絶対見るべし。あの頃の無茶苦茶なパワーが堪能できる快作(怪作?)である。
 
子供時代、送電線に登って感電してから体に電気が帯電し、エレキギターを弾く事で放電している…という主人公(浅野)の設定にまずぶっ飛ぶ。髪の毛がウニ頭なみに逆立っているスタイルからして異様だし、ナレーションとも言えない絶叫調の浅野のモノローグにスーパーインポーズがこれもビリビリ震えながらかぶる。そして後半は、顔半分が仏像になっている、これも電気修理業の男(永瀬)と、何故か一大バトルを繰り広げる。ここもハイテンションで、文字通り火花を散らす(電気そのものも武器だから当然?(笑))戦いぶり。石井演出もまさにデビュー当時に戻ったかのような、音楽も含めた、パンクでヘビーな演出を見せる。いまどき全編モノクロ映像というのも珍しい。
 ストーリーはあってなきが如し。ただただ勢いとノリだけで見せる作品。浅野忠信という役者の幅の広さにも感心させられる(「風花」のエリート役人、「PARTY7」の引きこもり青年、「五条霊戦記」の義経に本作。みんな違う!)。ただ不満は、上映時間がたったの55分という短さ。だからあっと言う間に終わった感じ。ラストも何か尻切れトンボで、もっと見たい気がする。二人のバトルを第二、第三と見せてくれればもっと面白くなったのではないか。ともあれ、この勢いで石井聰亙がさらなるエンタティンメントの力作を発表してくれることをファンとして望みたい。