劇場版ウルトラマンコスモス  (円谷プロ:飯島 敏宏 監督)

 久しぶりの劇場版「ウルトラマン」の新作。しかも敵は最強のライバル、バルタン星人。シリーズ新作…と言うよりも、旧作テレビシリーズのリメイク…と言う方がふさわしい。事実、最新のCGも多用したSFXはかなりいい出来である。ハリウッドSFX映画と比べても遜色ない。お話の方も、ウルトラマンにあこがれていた少年ムサシが、本物のウルトラマンと知り合い、手のひらに乗せてもらって空を飛ぶ…というあたりはかなり感動的である。
 ところが、である。科学特捜隊らしき組織が登場するのはいいとして、彼らの飛行メカが怪獣やバルタン星人と対決するのに、なんと…ボクシングのグラブが機体から出てきて怪獣をポンポン殴ったり、あるいは子守唄をスピーカーで流して、それでバルタン星人がスヤスヤ眠ってしまったり・・・と、こちらもほとんど「8時だよ!全員集合」並みの寒いギャグが登場したのには笑いを通り越して顔が引きつってしまった。これでは台無しである。これはSFXアクション映画であって、ギャグアニメではないぞ!と怒鳴りたくなった。「赤影」批評でも言ったが、子供向けだからといって、なんでこんな低レベルのギャグで笑いをとろうとするのだろう。テレビシリーズだってこんな寒いギャグはなかった。まあ実相寺昭雄が監督した一編で、変身ビームとスプーンを取り違えるというギャグはあったが、あのくらいなら一瞬だしご愛嬌であった。しかし今回のギャグは、あまりに子供をナメている(子守唄を聞かされたバルタン星人が、眠ると思いきや、「俺をバカにするな」とばかりにスピーカーをぶっ壊したならまだ笑える)。大人が見ても鑑賞に耐えるくらいのハードな作品に作ったって、子供は十分楽しむのである。観客をバカにすれば、やがて観客の方からバカにされるのである。その事が分かっていない。大ヒットしている「千と千尋の神隠し」が、子供向けであるにもかかわらず、まったく子供に媚びたシーンがない、ハードな作りで、それで子供も大人も吸引している、その事実を踏まえて、猛反省して欲しい。まあそれらのギャグ・シーンを除いてはまあまあだったのがまだ救いとは言えるのだが・・・