ラマになった王様  (ディズニー:マーク・ディンダル 監督)

 あんまり派手な宣伝をしていないし、「A.I.」やら宮崎駿の話題作の影に隠れていま一つ盛り上がっていないディズニー・アニメの新作だが、期待しないで見たらこれが意外な拾い物であった。
 お話は、南米のある国の若いがわがままで自分勝手な王様が、国を乗っ取ろうとする魔女イズマの魔法でラマに変身させられるが、気のいい農夫パチャの助けを借りてイズマと対決し、元の体に戻り勝利するまでを描く。面白い所は、それぞれのキャラクター付けの秀逸さで、王様は最初はかなり性格が悪く、パチャの家を潰してレジャー施設にしようとしており、ふとした事から王様を助けるハメになったパチャが、王様に反感を持ちながらも気の良さからつい助けてしまうあたりの気持ちの揺れがうまいし、助け合って行くうちに二人の間に次第に友情が生まれてくるそのプロセスが絶品である。また魔女の部下のクロンクが、子供好きで根は悪い人間でなく、彼の行動が物語の重要なカギになっているあたりもうまい作りである。そして特筆すべきは矢継ぎ早のハイテンポで展開するギャグのつるべうちの見事さ。どんなに面白いかは映画を見ていただくしかないが、まあかつてのテックス・エイヴェリーを中心としたワーナー・アニメ(「コヨーテとロードランナー」が代表作)を彷彿とさせる・・・とだけ言っておこう。ラストのクライマックスにおける人間に戻る薬の争奪ギャグは、久しぶりになつかしいマンガ映画を見た気分である。ディズニー・アニメとしては「アラジン」以来のハチャメチャ・ギャグ連発作品であろう…と言えば誉めすぎか。子供が見ても無論面白いが、大人のオールド・アニメ・ファンも満足させる近年まれなギャグ・アニメの(と言うより、カートゥーンと呼ぶにふさわしい)快作である。