Stereo Future  (東北新社:中野 裕之 監督)

 「SF サムライ・フィクション」という、新感覚時代劇で劇映画監督としてデビューした中野裕之監督の2作目。ビデオ・クリップ界では既に有名で(韓国アクション「シュリ」の日本版予告編を作ったのも彼)、この夏には初のメジャー作品「RED SHADOW 赤影」(東映配給)が待機中という日本映画期待の星。本作は“SF”シリーズ2作目という事で、SFを頭文字にした4つのキーワード(Silent Femaleとかその他)を軸に4つのエピソードが並列または交差し、それぞれがドタバタ喜劇風、ラブストーリー風、環境問題社会派風に展開するという凝った作り。ストーリーとしては売れない役者(永瀬正敏)と彼の恋人であるエリ(桃生亜希子)が別れてから再会するまでの話がメインで、そこにエリの姉の環境問題に関するテレビ番組作り、永瀬の悪友たちのインチキ商売などが絡むが、お話よりもテンポと美しい環境映像と音楽で見せる長めのビデオ・クリップと言った方がいいだろう。ま、その割にはコメディ部分がいま一つドロ臭い気がしないでもないが・・・。お楽しみは前作「サムライ・フィクション」の出演者たち(吹越満、谷啓)がチャンバラ映画の撮影でまったく同じ役柄を演じている所と、劇中映画の主役、主水介を演じる竹中直人が市川右太衛門の当り役を超オーバーアクトで怪演(!)している所か。この辺は楽しめる人とつまらないと思う人に別れる可能性があるだろう。私個人は楽しめましたけどね。中野が本物の日本映画界の星となるか否かは、まもなく公開の「赤影」の出来如何にかかっているのではないか。(ただ予告編を見た限りでは少しヤバい気がしているのだが・・・)