マレーナ  (伊:ジュゼッペ・トルナトーレ 監督)

 「ニュー・シネマ・パラダイス」は、私の生涯ベストテンでも上位にしたい傑作だった。
 しかしそれ以降のトルナトーレ作品については、どうもも一つ私の心の琴線に触れてこないのである。で、今回の新作も、ストーリーだけ聞いていると、これも私のマイ・ベスト・ピクチャー「おもいでの夏」(ロバート・マリガン監督)とちょっと似ている(第2次大戦の最中、年上の美しい未亡人にあこがれる少年が主人公の、リリシズム溢れる傑作)ので、期待したのだが・・・。

 確かに設定はよく似ている。しかしこちらの方は、女(マレーナ)の方はしょっちゅう男と寝るわ、ドイツ兵相手に娼婦の真似するわと貞操観念はほとんどないし、少年の方は夜中に女の家に覗きに入るし、パンティ盗んでマス掻くわと、こりゃどう見てもタチの悪いストーカー又は痴漢そのものである。いくら血の気の多いシチリア人だからと言え、ちょっと異常にしか見えない。そのくせ、「あなたは僕が守ります」なんて調子のいい事言ってるわりに、女が終戦後、町の女たちから袋叩きにあっても何もできないのだ。これではこの少年に感情移入なんか出来ない。ラストで少年はマレーナとやっと言葉を交わすのだが、その時がマレーナとの別れの時であった・・・というのがややせつなく、納得して見れたのはここだけであった。子供から大人への、少年の成長ドラマとして見ればまあまあの作品なのだろうが、「おもいでの夏」に感動した世代から見れば残念な出来であったと言うしかない。これは私個人の思いであるので、人によってはまた見方が変わるかも知れない。主演のモニカ・ベルッチはいかにもイタリア映画によく出てくるタイプの色気と母性を兼ね備えたグラマラスな美人で、悪くはなかったですよ。