天国から来た男たち  (日活:三池 崇史 監督)

 「漂流街」で久しぶりに映画界に復帰した吉川晃司の主演作(ただし企画は「漂流街」よりも先だったが)。監督は前作に引き続き、奇才・三池崇史。だいぶ前から話題になっており、いつ公開されるのかとやきもきしていたが、やっと見ることが出来た。そしてこれは今年の三池崇史作品(早くも本作で今年4作目!)中でも屈指の力作になった。この作品に全力投球した為、他の作品に力が入らなかったのか(いや冗談)と思えるくらい、引き締まった快作である。
 お話は、麻薬不法所持の濡れ衣を着せられ、フィリピンの刑務所にブチ込まれた商社マン(吉川)がそこでいろんな人たちと触れ合い、新しい自分を発見して行く…というもので、シチュエーションとしてはアラン・パーカーの佳作「ミッドナイト・エクスプレス」とか、1昨年の「ブロークダウン・パレス」なんかと同じ。しかしどちらかと言えばセミ・ドキュメンタルなタッチの前記2作に比べ、この作品、いかにも三池監督らしく破天荒で型破りである(本物の刑務所でロケし、エキストラは本物の囚人というのがスゴい)。刑務所の中では、金さえ払えば何でも出来るし、外へも出してもらえる。で、日本人の牢名主のような男(山崎努)は外へ出てヤミ取引で商売をやってるし、その他の日本人投獄者たちもいずれもいかがわしく変人奇人ばかりという、まさに三池ワールドの住人たちそのものである。最初はなじめなかった主人公が、いつしか彼らと連帯意識を持ち始め、会社への忠誠クソクラエとばかり、隠しておいた金を持ち逃げして仲間たちと国外脱出を図ろうとする。この後半において、変態奇人だと思っていた仲間たちが、意外にも善意と友情厚い男たちであったという展開になるのがやや肩透かしの感なきにしもあらずだが、とにかく快調なテンポで最後まで飽きさせない。ラストの人を食った後日譚も笑わされる。まさに三池節全開の快作である。途中でカメオ出演のゲストキャラも見ものである(「卓球しませんか?」には笑いころげましたよ)。