アタック・ナンバーハーフ  (タイ:ヨンユット・トンコントーン 監督)

 スポ根アニメをパロったようなイチビッた邦題(しかし「ナンバー1」に“ハーフ”を引っ掛けてあるあたりなかなかうまい?)に、“おカマのバレーボール・チームが国体を目指す”というあらすじを聞いて、きわ物か、下品なおフザケもののようなイメージを抱いていたのだが、やはり映画は見てみないと判らない。これは、「差別され疎外されていた人たちが団結し、バカにしていた奴らを見返し勝利する」というテーマの、実に感動的なエンタティンメントの快作なのである。見ていない人は、とにかくだまされたと思ってみて欲しい。感動する事請け合いである。しかもこれは、実話なのである。ホントにオカマチームが連戦連勝、国体で見事に優勝してしまったのである。まさに事実は小説より奇なり!
 バレーボールが好きなのに、オカマだという理由でチームに入れてもらえない主人公たち。そしてやっと自分たちを差別しない監督(これがいわゆるおナベ)率いるチームに入ったものの、他のメンバーが彼らを嫌って1人を残して全員辞めてしまう。そんな中でいつも陽気で前向きに考える主人公のジュンは、だったら仲間を集めればいいとばかりオカマばかりのチームを作ってしまう(正確には隠れゲイや性転換したハーフもいる)。猛練習を重ねて連勝を続けるうち、最初は彼らを差別していた観客や解説者たちが、その頑張りぶりにいつしか彼らを声援するようになるあたりの演出が秀逸である(最後まで彼らに敵対していた大会委員長が周囲の人たちによって散々な目に会いリタイアするあたりは抱腹絶倒!)。優勝決定戦におけるハラハラ・ドキドキの演出はまさに娯楽映画のツボを見事なまでに押えている。この監督はあなどれない。そして最後の大逆転劇、ここは例えば「メジャー・リーグ」とか、我が「シコ踏んじゃった。」「メッセンジャー」あたりの傑作エンタティンメント群に優るとも劣らない大感動シーンである…と書けばちょっと誉めすぎか?。とにかく、大いに笑い、感動し、そしてオカマにかかわらず、イジメられたり、差別されている人たちが勇気付けられ、元気になれる、これは素敵な快作である。それにしても昨年のシンガポール映画「フォーエバー・フィーバー」に続いてタイからもこんな秀作が届き、ますますアジアの中で日本だけがどんどん取り残されていってるような気がするのは私だけでしょうか。頑張れ日本映画!