アンブレイカブル (タッチストーン・ピクチャーズ:M・ナイト・シャマラン 監督)

 前作が大ヒットし、次回作が待たれていたシャマラン監督の新作。当然プレッシャーがあると思うが、またまたアッと言わせる結末が用意されている。・・・とは言うものの、前作のような内容を期待したらはぐらかされる。映画を未見の方の為に多くは語れないので、簡単にヒントのみ言っておく。本作は前作の裏返しのような作品である。それを象徴するように、鏡の像や、上下逆さまの映像が意味ありげに登場する。しかし、前作ほどには奥が深くなく、人物の心理の掘り下げも浅い。とにかくシャマラン監督の引っ掛けにうまくだまされるのを楽しむ程度の作品である。

(以下ネタバレがあります。映画を見た方のみ、下の部分を反転させて覗いてください)

 前作は、超能力を持った少年と彼を見守る男(ウィリス)との交流の物語であり、少年が心を開いて行くプロセスが丹念に描かれ、それだけでも感動できたのに、さらにウィリスの恐るべき正体がラストで判るというドンデン返しにもうならされた。その点、本作はその裏返しで、超能力を持った主人公(ウィリス)が自分の正体に気付き、やがてその使命を悟るまでの物語である。そして彼を見守る男(サミュエル・L・ジャクソン)に、実は意外な秘密が隠されていた・・・といった具合に本作のウィリスは前作の少年の役回りであり、ジャクソンが前作のウィリスの役回りを演じることとなる。まさに本作は前作と合わせ鏡のような位置付けにあるのである。ただ本作が弱い点は、ジャクソンの体中の骨がもろい病気は実際にある病気で、そんなに非現実的なものではないのに、ジャクソンが「絶対に死なないスーパーマンのような人間がこの世に(しかも世界中でなく自分の住むフィラデルフィアという狭い地域に)存在する」と思い込むのはちと無理がある点である。それと、ウィリスが人に触っただけでその人物の心の中が覗けるのなら、なんでそれまで自分の能力に気付かなかったのか…という点も弱い(それまで他人と握手したことはあるだろうに)。

 よく出来てはいるが、アメコミに全く興味がない人にとってはよく判らない作品かも知れない。シャマラン監督の本領は次回作まで待つ必要があるだろう。今回の作品はその予習と考えるといいだろう。