ゴジラ×メガギラス G消滅作戦  東宝:手塚 昌明 監督)

 昨年の「ゴジラ2000」には失望した。いろんなSF映画や怪獣映画からの継ぎはぎでストーリーに一貫性がなく、シリーズのベテラン大河原孝夫演出とは思えないユルフンぶりに、このシリーズも再開即アウトかなと思ったものだ。ところが今回の新作、脚本が昨年と同じ柏原寛司・三村渉コンビなのに見違えるくらいの会心の力作になっていたのには正直驚いた。まず冒頭のニュース映画シーンからして、おおっ〜とうなりたくなる見事な導入効果である(現在は全く消滅したが、あの時代は本編の前に必ずニュース映画の上映があったのだ!)。首都が大阪に移転し、大阪城の横に国会議事堂が並んでいるシーンはまさにセンス・オブ・ワンダーである。本筋にしても、主人公を、尊敬する上司をゴジラに殺され、ゴジラ退治に執念を燃やす女性特殊部隊員という設定にした為、話に1本筋が通っているし、演出のテンポも良くいわゆるアクション映画的爽快感がある。無論この作品にも前作同様“平成ガメラ”シリーズからの影響がかなり見受けられる(上司が「ガメラ2」で同じような役を演じた永島敏行で、身内を怪獣に殺され復讐心を燃やす設定は「ガメラ3」と同じ。カメラ目線もガメラ・シリーズ同様下からあおる角度が多い…等)が、今回はそれらが気にならなかったのは演出がそれらも含めた内外のSFアクション、パニック映画を十分研究し、消化した上で、子供向けでない、大人の鑑賞に耐えるサスペンスフルな上質のエンタティンメントを目指しているからである。格闘シーンも、上空からの視点を多用してドキュメンタルな効果を出す事に成功している。これがデビュー作の手塚昌明監督は子供の頃からのゴジラ・ファンだそうで、まさに嬉々として楽しいエンタティンメント作りに全精力をそそいだ様子がうかがえて爽快である。この新人監督の名前は覚えておきたい。ついでながらスクリーン・サイズがシネマスコープである事もうれしい。ゴジラシリーズとしては「ゴジラVSキングギドラ」以来の快作であると断言しておこう。