愛のコリーダ 2000 (仏/日:大島 渚 監督)

 25年前に作られた、我が国初のハードコア作品として当時かなりセンセーションを巻き起こした。しかし残念ながら当時は性表現に関しては、ヘアヌード全盛の現在からは想像もできない程ガンジがらめで、カット、修正、ボカシだらけで何が写っているのかさっぱり見えない状態で公開された(あんまりピンボケで何がなんだか分からない為、例えば「定は局部を切り離した」などと字幕が出る始末であった(笑))。その為わざわざ“「愛のコリーダ」をフランスで見るツァー”(フランスではまったくノーカットで公開された)なるものまで企画された程である。今から考えれば全くバカバカしい事をやっていたもんである。そしてやっと、この傑作をほぼオリジナルに近いプリントで見られる時代になった。喜ばしい事ではある(ただ100パーセントオリジナルとは行かず、ペニスにはまだボカシがかけられている。本当のオリジナルを見られるのはいつの事だろうか…)。
 で、
映画を見ての感想。一言で言って、その究極の愛の凄さに圧倒された。男のすべてを愛して愛して、愛しつくす女の情念。その愛をやさしく受け止め、命をかけてまでも応えようとする男のダンディズム(藤竜也がとてもいい。最初の公開時にはボカされていた事もあるが、これほど素晴らしい役者だとは思わなかった)。当時は、テーマは分るにしても何故ハードコアなのか、それが分からなかった。今見てその理由が分った気がする。戦前、まだ女権が低く見られていた時代に、自分の意志で男を愛し、最後は男をリードするまでに強くなって行った定という女の、まさに全身、体を武器として戦ったその戦いぶり(コリーダとは闘牛の事である)を描くのにはまさに本物の迫力がどうしても必要だったのである。デビュー以来常に権力や既成概念と戦い続けて来た大島渚ならではの見事な戦略には敬意を表したい。感動した。25年前の公開バージョンは、とても完全な作品とは言えないので、この2000年版こそ是非ベストテン対象作品として欲しい。蛇足だが、殿山泰司のペニス丸出し(こんなのボカシかける必要ない!)の熱演は必見である。この役者魂にも頭が下がる。凄い役者だったのである。