ホワット・ライズ・ビニース  (20世紀フォックス:ロバート・ゼメキス 監督)

 最近は「TATARI」を製作するなど、なぜかホラーに傾斜するゼメキスが、「ヒッチコックを今の時代に蘇らせた」と語るサスペンス・ホラー。で、見てみると出てくるわ出てくるわヒッチコック作品へのオマージュ(と言うかパロディ?)シーンのオンパレード。映画ファンにはどれだけヒッチが引用されているかを見つけるという楽しみもある。なんせ主人公ハリソン・フォードの役名が“ノーマン”である。まあ大抵のファンは「裏窓」と「サイコ」くらいはすぐ分る。私が見つけただけでも他に「疑惑の影」「断崖」それに「レベッカ」がありました。おまけにアラン・シルベストリの音楽まで「サイコ」のバーナード・ハーマンそっくりときてる。「そこまでやってしまうか〜」と突っ込みたくなる(ただ、ヒッチコックと決定的に違うのは、ヒッチは“オカルト”“心霊”ホラーは絶対に作らなかったという点である)。もう一つ、私が気付いたのは、ロマン・ポランスキーへのオマージュで、ショッキングな場面で“ガビーン”という大音響を立てて観客を震え上がらせる演出は私が映画を見て初めて鳥肌が立ったポランスキーの「反撥」を連想させたし、ヒロインが神経的にまいって、周囲が自分を陥れようとしていると妄想するあたりは「ローズマリーの赤ちゃん」ではないかと思っている。まあ見ている間は十分怖くて結構楽しめた。ただ興行成績は思わしくないという。多分わけの分らん題名が災いしたのだろう(英語の意味としては、映画の内容をよく伝えるいい題名だが、原題そのままのカタカナ題名は日本人にはさっぱり分らない)。いくら本国から原題通りにせよという指示があったにせよ、「こちらは日本だ!」と突っぱねるべきだろう(それなら例えば黒澤の「悪い奴ほどよく眠る」をそのままローマ字で題名にして、アメリカ人は意味が理解できるか)。日本語の題名を考えるなら、私なら「水の底に誰かいる」てのを考えたけどどうですかね。