BLOOD The Last Vampire  (ソニー・ピクチャーズ:北久保 弘之 監督)

 あのジャパニメーションの傑作「攻殻機動隊」を世に送り出した、プロダクションI.G.の企画・原作によるホラー・アクション・アニメ(押井守も企画協力として参加)。題名通り、いわゆる吸血鬼ハンターものであるが、主人公のバンパイア・ハンターがなんとセーラー服姿で、しかも武器が日本刀!というぶっ飛んだ設定で笑ってしまう。しかし映画が始まるや、フルデジタルによる幻想的で密度の濃い映像とスピーディでキレのあるダイナミックな描写で、わずか48分という短い上映時間にもかかわらず最後までハイテンションが持続し興奮させられる。監督はあの快作「老人Z」でアニメ・ファンのみならず映画ファンも満足させた北久保弘之。あの作品でもジェームス・キャメロンばりのこれでもかと押しまくるアクションのつるべ打ちに堪能させられたが、今回はさらにパワー・アップしている。デジタル技術によるせいかも知れないがアクションのダイナミックさと滑らかさはハリウッド・アクションと比較しても遜色ない(「人狼」の沖浦啓之が押井守の“精神”を受け継いでいるとするなら、北久保は押井の“アクションのダイナミズム”を受け継いでいると言えるだろう。奇しくも二人とも名前が“ヒロユキ”である)。セーラー服のヒロインも可愛らしくかつカッコいい!(なんでセーラー服なんだとヤボな事は言うまい。テレビ「スケバン刑事」で証明されたように、戦う少女戦士にはセーラー服がよく似合うのだ!)。多分この作品は海外でも絶賛を浴びるだろう。アニメとしては世界最高水準と誇っていい。にもかかわらずなんでこれがミニシアターのレイトショーでしか公開されないのか。世界のジャパニメーション・ファンや、これらの影響を受けたジェームス・キャメロン(ポスターにも賛辞を寄せている)やウォシャウスキー兄弟は、こんな傑作がきちんと公開されていない事を知ったら“ホワイ?”と不思議がることだろう。