三文役者 (近代映画協会:新藤 兼人 監督)

 個性的なバイプレイヤーとして活躍した殿山泰司の後半生を描いた、本年88才!になる大ベテラン新藤兼人監督の力作。竹中直人が、さすが物真似出身だけあって殿山とそっくりな喋り方でうまい。彼の愛人として晩年を支えたキミエを演じた荻野目慶子がオールヌードを晒す大熱演で演技賞もの。6年前に亡くなった音羽信子が生前に収録した、殿山への語りかけが絶妙に配され、殿山泰司という不思議な役者の素顔を見事に描き出す事に成功している。近代映協のプレハブ合宿形式の撮影現場も再現され、ある意味では近代映協の50年史にもなっており、それを支えて来たのが音羽信子と殿山泰司という二人の名俳優(映協の代表作「裸の島」はこの二人が主演)であった事を思えば感慨深いものがある。欲を言えば、彼が大好きだったというジャズとミステリー小説についてももう少し触れてくれればなお良かったのだが・・・。