クリクリのいた夏    (仏:ジャン・ベッケル 監督)

 フランスで200万人を動員したという話題作。監督は「勝負をつけろ」「タヒチの男」等のJ・P・ベルモンド主演作品や、最近ではセバスチャン・ジャプリゾ脚本によるサスペンス「殺意の夏」(83)で知られるジャン・ベッケル、脚本は再びジャプリゾが担当。しかし中味はとてもこのコンビが作ったとは思えない、'30年代の田舎を舞台にした、ノスタルジックな佳作であった。沼地で生活する大人たちや子供たちの楽天的な日常を淡々と綴っただけなのだが、それがなんともトボけていて、おおらかで、なつかしさを感じさせる(気分としてはわが「となりのトトロ」に似た感じである)。ギスギスした現代人にとって清涼剤的な内容がヒットした原因だろう。そして、あの大笑いの快作「奇人たちの晩餐会」でバカを演じて強烈な印象を残したジャック・ヴィユレが、ここでもさんざんバカ呼ばわりされるおかしなお父さんを演じているのも楽しい(すっかりバカ役者が板についた?)。 金持ちのお爺さんが、カエル釣りの達人である所も楽しい。最後には少しハラハラするサスペンスも用意されております。ほのぼのとした気分に浸りたい人にお薦めの小品佳作。