岸和田少年野球団 (ドラゴンフィルム:渡辺 武 監督)
「岸和田少年愚連隊」シリーズの4作目。ただし今回は原作3作目の、リイチの少年時代を描いた「望郷編」の中の1エピソードをヒントにNAKA雅MURAがオリジナルに近い脚本を書き下ろしたもの。主人公もリイチでなく、これまでは傍役だったガスのほとんど1人称で描かれる。物語は、大人になったが相変わらずうだつのあがらないガスが、新聞でかつてかけがえのない親友だった隆二の死亡記事を見て、13年前の少年時代を回想する所から始まる。と聞くとすぐさま連想するのが名作「スタンド・バイ・ミー」(ロブ・ライナー監督)。そう、これはまさに岸和田少年版「スタンド・バイ・ミー」なのである。例によってリイチのジイやん(前作と同じ笑福亭松之助)のたくらみで野球賭博目的で野球団が結成され、リイチと共にガスや小鉄らも参加する。そしてひょんなことから身体は弱いが抜群の野球センスを持つ隆二と知り合ったガスは彼と仲良しになり、二人は熱い友情で結ばれる。そして宿敵定のチームとの対決で隆二が目の覚めるようなピッチングを見せ、ガスのチームが逆転勝利するが、隆二は手術の為東京に行くこととなり、二人は再会を約し別れる・・・。というのがストーリーだが、喧嘩に明け暮れながらも、友情や固い連帯意識で結ばれた少年たちの日常がユーモラスかつおおらかに描かれ、ガスと隆二が次第に友情を深め合って行くプロセスも丁寧に描かれ、ちょっとジーンと来るし、同級生の女の子がいみじくもつぶやく「男の子っていいな」という言葉にこちらも共感を覚えるのである。野球のシーンも、隆二らがストライクを投げるシーンをワンカットで撮ったり、手抜きがない(ここらをいいかげんにごまかした野球映画がたまにある)。ラストでありゃっとズッこけるオチがあるのは反則じゃないかと思えるが、全体としては爽やかにまとめられ、シリーズ中でもこれは最高の出来ではないかと思う。監督の渡辺武はビデオ・シネマで活躍する一方、大藪春彦原作「凶銃ルガーP08」で劇場デビューし、「極つぶし」「幻想アンダルシア」などの佳作があり、望月六郎、三池崇史に次ぐビデオ・シネマ出身の実力派監督の3番手として私が期待している人である。これからの活躍に是非注目していただきたい。 ()