スペース・カウボーイ (ワーナー:クリント・イーストウッド 監督)

 男たちはいつも夢を見続ける・・・。40年前、宇宙飛行士として訓練を重ね、月に行く事を夢見続けていた4人の男たちは、NASAの都合でその夢を打ち砕かれてしまった。そのNASAが40年後、またも勝手な都合で当時の飛行士の一人、フランク(イーストウッド)にロシアの通信衛星の修理を依頼して来た事から、フランクはNASAに無理矢理あの4人組を宇宙に行かせろと交渉する。こうして、今や70歳前後の老人となった男たちが、かつての夢の実現に向けて動き出す…。うーむこういうストーリーを聞くだけでもわくわくして来る。これは老人になっても、いつまでも子供のような夢を持ち続ける男たちのロマンを高らかに描いたファンタジーである。実際に70歳になってしまったイーストウッドでなければ作れない映画である。それだけでも面白いのに、後半そのロシアの通信衛星にとんでもない秘密が隠されており、結果としてチームの一人、トミー・リー・ジョーンズが犠牲となって地球を救うという結末を迎える。ここはやや「アルマゲドン」してるが、あれと違うのは、ジョーンズが命と引き換えに、月に行きたいという40年来の夢をかなえる点である。ラストシーンには泣けた。ああいう風に死ねたら最高だろう。題名に「カウボーイ」とあるが、4人がNASAに意気揚揚と乗り込んで行くシーンはサム・ペキンパーの傑作西部劇「ワイルド・バンチ」を思い起こさせる。あれもまた至福の死に様を見せる老人たちの映画であった(ペキンパーは他にも「昼下りの決闘」という老人たちが無法な若者たちと対決し死んで行くという西部劇を作っている)。テレビ西部劇「ローハイド」が出世作であると同時に、最後の西部劇スターでもあるイーストウッドは、ひょっとしたらこの作品を亡きペキンパーに捧げたのかも知れない。イーストウッド作品の中では大好きな秀作である。       

(付記)思いっきりマニアックな事を書かせていただく。この作品に出ているジェームス・ガーナーの代表的な西部劇作品に「夕陽に立つ保安官」「地平線から来た男」があり、監督はどちらもバート・ケネディ。で、このケネディの出世作「モンタナの西」「ランダース」、ペキンパーの「昼下りの決闘」、イーストウッドが師と仰ぐドン・シーゲル監督とイーストウッドの初顔合せ作「マンハッタン無宿」及びシーゲルがアラン・スミシーという変名で監督した傑作西部劇「ガンファイターの最後」・・・これらは皆、リチャード・E・ライオンズという同一プロデューサーの作品である。不思議なつながりがあるのである。