パーフェクト・ストーム (ワーナー:ウォルフガング・ペーターゼン 監督)

 この映画は、とにかく自然というものは恐ろしい、人間は自然をあなどってはいけない・・・というテーマで貫かれている。漁船の船長として長いキャリアを持ち、海の怖さを知っているはずの主人公(ジョージ・クルーニー)は、それでも生活の為に危険な海に乗り出さざるを得ない(特にそれまで不漁でノルマを達成出来ていないだけに余計)。クライマックスのパーフェクト・ストームのSFXばかりが話題になっているが、前半、主人公を始めとするクルーたちがノルマ達成の為、漁場を転々とし、漁獲をする姿をかなり丁寧に描いている点も忘れてはならない。落水した仲間を、それまで反目していた漁師仲間が助けるシーンもちょっとジーンときます。嵐のシークェンスでは、彼らの姿と並行して救助活動をするレスキュー隊の活動ぶりも丁寧に描かれる。自分たちも危険にさらされているのに、それでもギリギリまで何とか助けようとする男たちの仕事に賭けるプライドと情熱・・・。そう、船長たちも含め、ここには自然を畏怖しながらも、それでも自然と対決し、乗り切ろうとする男たちの孤独な闘いの姿がある。出来うれば彼らに勝利させてやりたい、そして愛する女たちのもとへ帰させてあげたい・・・。そういう思いを打ち砕く最後の大波の凄さ!このSFX映像の凄さは圧巻である。自然とはこんなにも恐ろしいものなのだという事がまざまざと実感できる(波の高さは10階建のビルくらいだそうだ。10階から転落したらどうなるか想像してみるといい)。
 実話の映画化という事でかなり制約された部分もあったに違いない。それでもここまで人間と自然との対決をきちんと描き、自然
の脅威の中で人間とは結局小さな存在でしかないというテーマ(最後、マーク・ウォルバーグが大きな波の谷間に豆粒のように浮いているシーンが象徴的である)を、SFXを最大限に活用する事で十分に描ききった点は評価して良いと思う。少々の欠点は目をつぶってもいいのではないか。