フォーエバ・フィーバー (シンガポール:グレン・ゴーイ 監督)
珍しい、シンガポール映画である。で、期待しなかった分だけなかなか面白かった。お話は実に他愛ない。'77年頃、ブルース・リー・ファンの主人公ホックが、映画館で見た「サタデー・ナイト・フィーバー」の主人公(ジョン・トラボルタ・・・と思いきや、ちょっと顔が違う)に夢中になり、ダンス大会に出場すべく(ただし理由はオートバイを買う資金稼ぎ)猛特訓を開始し、ハンサムなライバルの妨害を撥ね退け見事優勝するというもの。ダンス大会のシーンは本家と遜色ないくらい振付もカメラワークも決まっていて意外と見せるが、むしろ面白いのはいろんな映画のパロディやオマージュがうまくブレンドされているあたりで、これには大笑いさせられる(ダンス教室のシーンはわが「Shall We ダンス?」にそっくりだし、無論「サタデー・ナイト−」を決めのポーズもそのままに見事にパクッているし、ニセ・トラボルタがスクリーンから飛び出てくるところはウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」だし、そいつが主人公を励まし、服装もアドバイスし、最後は「もう俺は必要ないだろ」とばかりに去って行く所はこれもアレンの「ボギー、俺も男だ」を思わせる)。ブルース・リーになりきってカンフーでチンピラと対決するシーンにも笑わされる。その一方、家族の絆の大切さをしんみりと描いた部分もあり、最後は幼馴染みとの恋も成就して、全体として爽やかな青春ドラマとして仕上がっているあたりはなかなかよろしい。エンド・クレジットに監督の言葉として「この映画を私の最初のダンスの教師である両親に捧げる」と出てくる。両親が登場するシーンを丁寧に描いているのはその為だったのかと納得した。ホックも多分監督自身の自画像なのだろう。劇場を出た時、なんだかとてもハッピーな気分になれる、そんな拾い物の佳作です。 ()