U−571 (ユニバーサル:ジョナサン・モストウ 監督)
凄い!凄い!。これは大傑作である。第二次大戦下の北大西洋。ドイツ軍の暗号解読機・エニグマを奪回する為、特殊部隊が編成され、首尾よく成功したものの味方の潜水艦が撃沈され、艦長も戦死した為、副艦長の主人公、タイラー大尉(マシュー・マコノヒー)は小人数の部下を引き連れ、奪ったUボートを駆ってエニグマを持ち帰るべく敵中横断を敢行する。・・・と、話だけでも面白そうだが、映画は予想をはるかに上回りメチャ面白い。「ブレーキ・ダウン」(97)でデビューし、これがまだ2作目というジョナサン・モストウ監督、過去のこの手の映画を十分研究している様子が覗える。基本はロバート・ワイズの「深く静かに潜行せよ」(58)あたりだろうが、後半の駆逐艦との息詰る対決は「眼下の敵」(47。これは秀作です)だろうし、ボート内の描写はW・ペーターゼンのこれまた傑作「Uボート」(81)からの影響が多大である。そして敵兵に化けて潜入する特殊任務という設定は、アリステア・マクリーンの傑作冒険小説の映画化「ナバロンの要塞」(61)あたりからの影響をモロに受けており、本作はむしろこうした冒険アクション映画に感じは近いと言えるだろう。また全体としては、野心はあるものの艦長としてはリーダーとしての適格性に欠けるとされた主人公タイラー大尉が、突然リーダーにならざるを得なくなり、さまざまに決断を迫られる事態を乗り切り、一人前のリーダーに成長して行くというストーリーが骨子となっており、これが絶妙にアクションとサスペンスを乱すことなく(むしろサスペンスを加味している)織り込まれているあたりは脚本も演出も実に見事である。わが「ホワイトアウト」に欠けているのはそこらなのである。敵の機雷攻撃を避け、海底深く潜行したため、いつ水圧で潰れるかというギリギリのサスペンス描写は、デジタル・サウンドの音響効果とも相まって息詰るほどである(できるだけ音響設備のいい大劇場で見ることをお勧めする)。そして最後の最後、大逆転シーンではそれらの緊張が一気に解放され、観客も主人公たちと一体になってカタルシスを満喫することとなる。実にうまい!。これぞ娯楽映画の王道である。まるっきり悪役にされているドイツ軍は少々可哀相だが、エンタティンメントとして割り切って欲しい。モストウ監督は早くも2作目にしてハリウッドを代表する一流監督となった(それにしても、カー・アクション1本撮っただけの若手監督になんと!120億円の製作費をかけた超大作をまかせるプロデューサーの慧眼はいつもながら敬服する。ちなみに製作者はF・フェリーニ作品からリメイクの「キング・コング」まで半世紀近く!活躍し、先頃の第73回アカデミー賞でアービング・G・タルバーグ賞を受賞した大御所ディノ・ディ・ラウレンティスである)。1作目がカー・アクション、2作目が海を舞台にした冒険アクションというあたりも、あのスピルバーグとそっくりのスタートぶりである(そう言えば本作ラストのクライマックスは「ジョーズ」とよく似ていると言えなくもない)。本年のわがベスト1は本作で決まりである。必見! ()