ザ・ハリケーン (ユニバーサル:ノーマン・ジュイソン 監督)

 デンゼル・ワンントン主演の、冤罪がテーマの実話の映画化。この所ご無沙汰だった名匠ノーマン・ジュイソン監督が久々に復活。「ジーザス・クライスト・スーパースター」「屋根の上のバイオリン弾き」等のミュージカル作品もあるが、どちらかと言えばアカデミー賞受賞の力作「夜の大捜査線」や「ソルジャー・ストーリー」「ジャスティス」などの硬派・社会派作品が代表作(前の2本はいずれも本作と同じく黒人差別がテーマ。ちなみに「ソルジャー・−」には無名時代のデンゼル・ワシントンがチラッと出ています)。そんなわけで本作は久々にジュイソンらしい作品と言える。無実の罪で投獄された主人公ハリケーンの数十年にわたる獄中生活を、時にはイラ立ち、絶望にさいなまれる人間の弱さもかいま見せ、丹念に描いた演出はさすがベテランらしい堅実さである。並行して描かれる、彼の著作に感動した黒人少年と3人のカナダ人の救出活動も、妨害が入ったりして緊張感が高まる。ラストの大逆転はとても実話と思えないほどドラマチックで感動的。ここで逆転評決を出す裁判長を演じているのが「夜の大捜査線」で黒人刑事と対立し最後は和解する警察署長を好演した、あの名優ロッド・スタイガーである。こういう所も映画ファンとしては見逃せない。冤罪ものとしては近来にない力作である。