グリーン・マイル (ユニバーサル:フランク・ダラボン 監督)

 傑作「ショーシャンクの空に」に続いて、監督フランク・ダラボンが再びスティーブン・キング原作の刑務所ものを取り上げ、そしてまたもや奇跡のような傑作を完成させた。私は絶対こちらの方がアカデミー賞を取るべきだと思う。一言で言えばいわゆる“冤罪もの”なのだが、そういう社会派には作者たちはまったく持って行く気がなく、奇跡を起こして人を幸せにする不思議な能力を持った大男、ジョン・コーフィーが、死刑をも自分に与えられた運命として受け入れ(それは自分の能力をもってしても2人の少女を救えなかった事を負い目としているのかも知れない)、何の弁明もせずにおだやかに死んで行くという物語を通して、人間の罪とは、生きるとは何かを真摯に問いかける。そして彼の命を救えなかった主人公ポールは、その罪を償うかのように孤独に生き続けるのだ。3時間8分もある長い映画だが少しも長いとは感じなかった。それだけ原作もダラボンの演出も緩急取り混ぜ実に良く出来ていることが分かる。死刑の直前、コーフィーがフレッド・アステア主演の「トップ・ハット」を見るシーンは泣ける(名優は死んでも、名作は永遠に生き残る。そのことを考え、余計涙が溢れた)。心が洗われる秀作である。