イグジステンス (カナダ・英:デヴィッド・クローネンバーグ 監督)

 デヴィッド・リンチと並ぶもう一人のデヴィッド=カルト作家、クローネンバーグ久々の新作。こちらは相変わらずのクセ球ぶりに一安心(?)。新作ゲームを体感しているうちに現実とバーチャルとが区別つかなくなるという設定は岡島二人の「クラインの壷」(89)によく似ている(さすが岡島、こちらの方が11年も早い!)。体に穴を開け、ヘソの緒みたいなコードを胎盤のようなゲーム本体とつなぐというグロな感覚はクローネンバーグ中期の秀作「ビデオドローム」('82・未公開。ビデオのみ)をいやでも連想する。あちらも内臓から肉体と同化したビデオテープが出てきたり、テレビ画面から銃が飛び出て来たりと当時としてはかなり大胆な作りで、しかし根底にあるのは時代の先端を行くメディアやテクノロジーの発達は究極において人間の精神と肉体を蝕む存在ではないか…というシニシズムにおいて共通しており、そういう意味ではクローネンバーグは一貫して変わっていないという事なのである。ファンにとっては安心して見れるが以前の作品よりは衝撃度が薄くなっている点が欠点と言えば欠点であろうか。