ストレイト・ストーリー (米・仏:デヴィッド・リンチ 監督)

 こちらも実話を基にした感動の物語。10年前にケンカ別れした兄が病に倒れたと聞き、自分の命も長くないと感じていた老人が、時速たった8キロのトラクターで6週間かけて兄に会いに行くというストーリー。バスでも利用すれば1日で着く距離なのに、しかも目も悪く腰も弱っているというのに、この老人はかたくなに自力で進む道を選ぶ。これが俺流の生き方だ、とでも言うように…。再会した兄はトラクターを見て言う。「あれで来たのか…」。それだけで二人の心が再び通い合った事がよく分かる。爽やかな幕切れである。「ブルー・ベルベット」「ツィン・ピークス」のカルトの鬼才、リンチにしては題名通りストレートな作品で、サム・ライミともども、かつてのクセ球監督がそろって直球を投げ始めたのはどういう事なのでしょうか(それでも1日1回は車で鹿をはねてしまう女性の登場はどことなくリンチ的である)。まあともかく、リンチ作品などと構えず、じっくり感動を味わう事をお勧めする。