クレヨンしんちゃん爆発!温泉わくわく大決戦 (TV)(東宝:原 恵一 監督)

 わっはっは。噂には聞いていたが、これは本当に楽しい快作である。日本の子供向けアニメは「ドラえもん」にしろ本作にしろ、どうせ他愛ないと思っていたら結構大人も楽しめる水準以上の作品があるのであなどれない。ストーリー的には地球温泉化計画をたくらむ悪の組織と、それを阻止する政府秘密機関・温泉Gメン(!)との闘いを描くという、まあほとんど「オースティン・パワーズ」のノリのおバカ映画(悪のボスの扮装が007のブロフェルドを意識している所まで同じ)なのだが、バカバカしさの徹底ぶりではこちらの方がずっと面白い!。自衛隊が伊福部昭作曲、「怪獣大戦争」のテーマを流しながら行進し、そうすると敵の巨大ロボットの頭からスピーカーが出てきて、「ゴジラ・マーチ」を流して対抗し、それを聞いた自衛隊が蜘蛛の子を散らすように逃げる…というギャグのつるべ打ちには「ゴジラ」で育った我々世代の方が涙を流して笑い転げるはずである。それより、巨大ロボットが都心に迫っているのに政府は優柔不断(首相の顔がオブチさんそっくり!)、テレビでは相変わらずノー天気なワイドショーを続けているありさまに、悪玉が「この国の危機管理はどうなっとるのだ!」と怒りだすあたりの鋭い社会風刺は、最近こうしたアイロニーとウィットに富んだコメディがほとんど作られなくなっただけに、もっと評価していいのではないか。丹波哲郎が、金の魂の湯(略してキンタマの湯というのがおかしい)の精・丹波(!)の声でゲスト(顔もそのまんま丹波哲郎!)出演。とにかく最後まで笑わせてくれるナンセンス・コメディの快作である。本当は劇場で見たいのだが、子供が大きくなってこういうのを見なくなってしまい、1人で行くのは気が引けるのでテレビで見参した次第。どこかで大人向けオールナイト(「ドラえもん」では実施済)でもやってくれないかな。