シュリ    (韓国:カン・ジェギュ 監督)

 凄い!これは傑作である。ハリウッド娯楽映画を徹底的に研究し、迫力のあるアクション・シーンを網羅し、なおかつ南北朝鮮問題も盛り込んでリアルな緊迫感を生み出し、ラストでは哀しいラブストーリーに泣けるようにもなっている。もうとにかく娯楽映画のあらゆる要素をこれでもか、とぶち込んだ究極のエンタティンメントである。ハリウッド映画からのいただきはざっと思いつくだけでも、液体爆弾の強奪シーンはミミ・レダーの「ピースメーカー」、後半のサッカー・スタジアムのテロ工作部分はラリー・ピアースの「パニック・イン・スタジアム」、フランケンハイマーの「ブラック・サンデー」といった具合。手持ちカメラを振り回すアクション演出はわが深作欣二の影響であろう。しかし素晴らしいのはそうしたいただき部分がちゃんと作品に消化され、全体として骨太のアクション映画でありつつ、せつないラブストーリーをきっちり描く事によって南北分断の悲劇が浮かび上がるという構成の見事さである。韓国からこんなに凄い映画が誕生した事を日本の映画関係者は深刻に受け止めなければならない。昨年の秀作「八月のクリスマス」と併せ、このままだと日本映画は韓国に間違いなく追い抜かれてしまうに違いないからである。