新選組         (メディアボックス:市川 崑 監督)

 大ベテラン、市川崑の新作は、まったく年齢を感じさせない実験的作品。マンガの原画をベニヤ板に貼って立てかけたり下から動かしたりしているだけだが、表情そのものは全く動かないにも係わらず、見続けているうちに次第にそれらが生きているように見えてくるから不思議。まさに崑マジック。特に絶妙なのは光と陰影の使い方。そして黒鉄ヒロシの原作も史実を綿密に調べ上げ、これまでのどの小説やマンガ、映画化作品よりもリアルで人間臭さに溢れた魅力的な人物像が描かれていて見事であり、この原作の良さも成功の一因であろう。最近は「四十七人の刺客」「八つ墓村」といま一つの出来の作品が続いていて、市川崑も衰えたか…と思っていたが、本作はまだまだ崑パワー健在を見せつけてくれた力作である。次作「どら平太」が楽しみになってきた。