ナビイの恋 (オフィス・シロウズ:中江 裕司 監督)

 正月そうそう、とてもハッピーな気分になれる傑作に出会った。今のところ、私の本年度ベストワンである。沖縄を舞台に、若者と、60年ぶりに再会した老人の2組のカップルの恋が音楽と踊りに囲まれて進行する。それだけの映画なのだが、むしろ主役はこの音楽と踊りの方だと言っていい。沖縄民謡だけでなく、オペラからケルト民謡、踊りながらバイオリンを曲弾きする大道芸人、そしておじい役の登川誠仁の三線(サンシン)演奏、どれも素晴らしい。最後の結婚式では村人たちも含め全員が踊りだす。この映画の素敵さは言葉ではとても説明できない。とにかく見てもらうのが一番である。気分としては和製シネ・オペレッタの傑作「鴛鴦歌合戦」(マキノ雅弘)に似たものがある(作者たちも意識したと言っている)。出演者では淀川長治と花澤徳衛を足して2で割ったような風貌の登川誠仁が最高!本職は琉球三線の名人(沖縄のジミ・ヘンドリックスというコピーが傑作)である為セリフはぎこちないが飄々としたトボけた存在感は絶妙。助演男優賞を与えたいくらいである。監督の中江裕司はこれまで「パイナップル・ツァーズ」('92年)、「パイパティローマ」('94年)と、すべて沖縄を舞台にした作品を撮り続けて来た。今回はその集大成とでも言えるだろう(ナビイ役の平良とみは前2作にも出演)。ミニ・シアター上映ながらかなりヒットしたようで喜ばしい事だが、欲を言えば全国的に拡大上映してもっともっと多くの人に見てもらいたい。そうすれば世の中、もっと明るく元気になれるだろう。