海の上のピアニスト (ジュゼッペ・トルナトーレ 監督)

 「ニュー・シネマ・パラダイス」のトルナトーレ監督の、久しぶりに泣かせる感動作。・・・と言いたいところですが、確かに見てる間は語り口のうまさもあって感傷にひたったのだが、見終わってよく考えるとご都合主義的なアラも散見される。語り手のトランペッターが入った古楽器店に偶然主人公(ティム・ロス)がただ1枚吹き込んだレコードがあったり、その翌日すぐ近くの港で主人公が生涯過ごした船が爆破されることになっていたりと偶然が目立つし、主人公の少年時代、ピアノを始めて見たシーンの後急にすごくピアノがうまくなっていたりするのはちょっと省略し過ぎである。育ての親が亡くなった後彼がどうやって食うのに困らなかったのかも説明がない。彼が最も愛したのはピアノであろうが、死ぬまで船から降りようとしなかった理由がも一つ弱い(「ニュー・シネマ−」でフィリップ・ノワレが死ぬまでパラダイス座を愛したのはよく分かるのだが)。まあ苦情を言いたくなるのはそれほど「ニュー・シネマ−」が傑作だったからで、あれ以上の作品をトルナトーレについ期待してしまうせいかも知れない。