白 痴  (松竹:手塚 眞 監督)

 ビジュアリストとして活躍している手塚眞が、10年ぶりに手がけた劇場映画、しかもこれまでのインディーズ作品に比べ、かなりの大作である。しかしさすが手塚、ただの文芸作品になるはずがなく、太平洋戦争中であるにもかかわらず巨大な放送局でデカダンスなミュージカルが製作されていたり、主人公の住む街の家並みが極端に傾いていたりの異形の映像が魅力的。一応白痴の少女との生活によって主人公の心の傷が癒されて行くというストーリーはあるが、ラストの壮大な炎上シーンも含めて、全編ビジュアルとイマジネーションに凝りまくった映像に酔わされる作品である。残念なのは、これほどの大作が大阪ではミニシアター(梅田ガーデンシネマ)でしか公開されなかったということである。これは是非とも大劇場でロードショー公開すべきであった。大手の松竹配給であるだけに何故そうできなかったのか、考えさせられる問題である。