皆 月   (日活:望月六郎 監督)

 原作は花村萬月。脚本が「身も心も」などの荒井晴彦。監督は秀作「鬼火」の望月六郎。このトリオであればどんな作品になるかほぼ分かるしその通りの作品でした。ただこの作品でいち押ししておきたいのが主人公の義弟を演じた北村一輝の存在感。破れかぶれ的な破天荒さと虚無感と一途な情念が入り乱れた難しい役柄を見事にこなしている。今後も注目。迫真のファック・シーンをこなした吉本多香美もいい。なさけない中年男を演じたら奥田瑛二はまさにはまり役である。なおプロデューサーに吉田達の名があるが、この人、東映時代に健サンの「昭和残侠伝」シリーズ、深作欣二の「狼と豚と人間」「仁義の墓場」等の傑作をプロデュースし、東映ビデオでVシネマをスタートさせ、ビデオシネマ・ブームの先鞭をつけるなどの功績を果たした名プロデューサーである。新天地日活での活躍を期待してやまないとエールを送っておこう。