金融腐蝕列島[呪縛] (東映:原田眞人 監督)

 ひと昔前、山本薩夫監督などによる経済界の闇の部分を告発した映画がよく作られていたが、そうした骨太の作品を作れる監督がいなくなったせいもあって最近はとんと見なくなった。本作品は久しぶりにそうした流れの映画の復活であり、これを最近好調の原田眞人がダイナミックかつテンポよく仕上げ、快作となった。原作は第一勧銀の総会屋不正融資事件を下敷きにしており、同じ業界に勤める私としては余計リアリティを感じた。いろいろと言う人もいるが、モデルがあり、現在も進行している金融再編の中でこの題材をサスペンスフルなエンタティンメントとして完成し、作品的にも興行的にも成功させた事は大きな意義があると思う。監督の原田眞人には今や風格と円熟味さえ感じさせられる。日本映画界のエースとして頑張って欲しい。