第9回 「大脱獄・網走刑務所」

 
開催日: 1975年5月24日(土)

場所: シギノ大劇

上映開始: PM 10:40

テーマ: 渡哲也に続く俳優特集は、80歳を超えて、今なお映画スターとしてのオーラを放つ高倉健の、その出演作の中でも人気が高い代表シリーズ、「網走番外地」の5本立。石井輝男監督で10本、その後「新・網走番外地」として降旗康男監督を中心に8本が作られた。いずれも健サンの魅力溢れる快作揃いだけに、この中から5本を選ぶのは至難の技。まず記念すべき第1作目、シリーズ中の最高傑作とされる第3作「望郷編」、まではすんなり決まり、あとの3本は議論百出の結果、最終的にシリーズがピークに達した頃の8作目「決斗零下30度」、「新」シリーズの第1作目、そしてシリーズ最終作「嵐呼ぶダンプ仁義」というラインナップとなった。シリーズ初心者にも目配りした、まずまず順当な編成ではないだろうか。

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(作品紹介)

 網走番外地

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1965.04.18 上映時間:92分  白黒/東映スコープ
 企画:大賀義文 
 監督:石井輝男
 原作:伊藤 一
 脚色:石井輝男
 撮影:山沢義一 
 音楽:八木正生
 助監督:内藤 誠 
 出演者:高倉 健、南原宏治、丹波哲郎、安部 徹、嵐寛寿郎、田中邦衛

記念すべきシリーズ第1作。既に前年「日本侠客伝」シリーズがスタートし、徐々に人気が高まりつつあった高倉健主演作だが、この作品は刑務所が舞台で健サンは囚人。そんな地味な内容ではヒットしないと判断した会社側は、モノクロ・低予算での製作を決定。しかし反骨の監督、石井輝男はそんな製作条件にもめげず、アメリカ映画「手錠のままの脱獄」を換骨奪胎した、スピーディで男性的魅力に溢れたアクション映画に仕上げ、映画は予想を上回る大ヒットを記録、健サン歌う主題歌もこれまたヒットし、高倉健は押しも押されもせぬ東映のエース級スターの位置を確保した。嵐寛寿郎が貫禄ある名演を魅せ、以後レギュラーとなって行く。本作がヒットした事ですぐにシリーズ第2作が、今度はめでたくカラーで作られる事となった。

 

 網走番外地/望郷編

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1965.10.31 上映時間:88分  カラー/東映スコープ
 企画:植木照男 
 監督:石井輝男
 原作:伊藤 一
 脚色:石井輝男
 撮影:稲田喜一
 音楽:八木正生
 助監督:内藤 誠  
 出演者:高倉 健、林田マーガレット、嵐寛寿郎、中谷一郎、桜町弘子、杉浦直樹、田中邦衛
 
シリーズ第3作。本作から本格的なシリーズ化を意図して作られたらしい。舞台は網走を遠く離れて長崎。印象的なのは、健サンと、肌の黒い混血の少女エミー(林田マーガレット)との心の交流がしっとりと描かれている所。これが異国情緒漂う長崎ロケとも相まって、只のアクション映画を超えた、男の哀愁とダンディズム漂う魅力的な作品になっている。
特に印象的なのは、かつての網走仲間と久々に再会した宴会の席で、あの網走刑務所での苦役の日々を回想するシーン。第1作目のフィルムから引用したモノクロ映像が効果的に利用されており、屈指の名シーンとなった。
また、ライバルともなる殺し屋を演じた杉浦直樹が、白のスーツをダンディに着こなし、いつも童謡「ななつの子」を口笛で吹いている等、そのキザなキャラクターも楽しい。この人物像は、後の日活作品「東京流れ者」における渡哲也のキャラクターにも影響を与えていると思われる。シリーズの最高作であるのは疑いがないだろう。

 

 網走番外地/決斗零下30度

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1967.04.20 上映時間:88分  カラー/東映スコープ
 企画:植木照男 
 監督:石井輝男
 原作:伊藤 一
 脚色:石井輝男
 撮影:中島芳男
 音楽:八木正生
 助監督:寺西国光  
 出演者:高倉 健、嵐寛寿郎、田中邦衛、丹波哲郎、大原麗子、三原葉子、吉田輝雄、由利 徹

シリーズ第8作。冒頭、1作目「網走番外地」、2作目「続網走番外地」、3作目「望郷篇」等の名場面がモノクロの回想で流れ、やがて「望郷篇」で杉浦直樹が「ななつの子」を口笛で吹いているシーンの時に、小さな女の子が同曲を歌っているのを聞いて、健サンが汽車の中で目を覚ますという導入部のファン・サービスが泣かせる。物語は、ボスが牛耳る炭鉱を舞台に、卑劣な悪人どもと対決する健サンの活躍を描くお馴染みパターン。楽しいのが、音楽がマカロニ・ウエスタン調で、吉田輝雄扮する助っ人が、「夕陽のガンマン」に登場するリー・バン・クリーフよろしく巻き上げホルダーを広げて照準器付きライフルを取り出し、遥か遠くに逃げる男を撃つシーンにはニヤリとさせられる。しかし全体的には我慢に我慢を重ねる、任侠映画の類型パターンが目立ち、初期の頃のようなカラッとした男性的アクションの味わいはやや薄れた感がある。

 

 新・網走番外地

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1968.12.28 上映時間:94分  カラー/東映スコープ
 企画:俊藤浩滋、矢部 恒 
 監督:マキノ雅弘  
 原案:伊藤 一 
 脚本:村尾 昭 
 撮影:坪井 誠 
 音楽:八木正生
 出演者:高倉 健、長門裕之、水島道太郎、三橋達也、松尾嘉代、志村 喬、金子信雄

10作続いた石井輝男監督作から、マンネリを防ぐ為か本作から主人公の名前が橘真一から末広勝治と変り、監督もマキノ雅弘へとバトンタッチした。時代も昭和23年、主人公も戦争からの復員兵、舞台も戦後の闇市といった具合に、かなり大幅なモデルチェンジが行われている。マキノが監督している事もあるが、全体的に「日本侠客伝」シリーズと展開や人物像が似ている。殴り込みが終って送られる先が網走刑務所、というだけで、とうとう他の任侠映画とほとんど変らない作品になってしまっているのは、石井監督の「網走番外地」ファンにとっては不満が残る所である。逆にマキノ雅弘監督のファンには、いつも変らぬマキノ節を堪能出来るという事で、両監督共ファンである我々はちょっと複雑な思いである。

 

 新・網走番外地/嵐呼ぶダンプ仁義

 製作:東映(東京撮影所) 
 封切日:1972.08.12 上映時間:105分  カラー/東映スコープ
 企画:俊藤浩滋 矢部恒 
 監督:降旗康男 
 原案:伊藤 一 
 脚本:村尾 昭 
 撮影:飯村雅彦 
 音楽:八木正生 
 助監督:福湯通夫
 出演者:高倉 健、生田悦子、田中邦衛、南 利明、宍戸 錠、水島道太郎、丹波哲郎 

「新」シリーズ8本のうち、6本を監督した降旗康男監督作品であるが、任侠映画全体が頭打ちになっていた時期で、健サンの「番外地」といえども例外ではなく、盆と正月に必ず公開されていた「番外地」シリーズはこれで打ち止めとなり、翌年の正月にはあの“任侠映画の息の根を止めた”といわれる「仁義なき戦い」が登場する事となるのである。
それでも本作は趣向を変え、ダンプカーが派手に走り回る、スーピディなアクションに男勝りの女運転手との恋も絡む、まずまずの楽しい作品になっている。特に面白いのは、ギンギラギンにデコレーションしたダンプカーが多数登場するシーンで、これがヒントになって、これから3年後の「トラック野郎」シリーズの登場に繫がったのかも知れない。

 
(回想記)

シネマ自由区メンバーの中に熱狂的な健サンファンがおり、このプログラムは彼念願の企画。このシリーズが公開されていた昭和40年〜47年と言えば、任侠映画の隆盛から始まり、やがて衰退に至るまでの期間とほぼ一致しており、「網走盤外地」シリーズは中でもオールナイト上映の熱気が社会現象となるほどのブームを巻き起こした点においても、東映任侠映画を牽引した代表的シリーズと言えるだろう。シリーズの本数が18本と、任侠ものシリーズの中でも最多である事を見ても、このシリーズの人気の高さが分かる。当日の観客動員もまずまず。しかしさすがに任侠映画全盛時に見たような、怒涛のような拍手、歓声の再現は望むべくもなかった。

 
 DVD/ビデオソフト紹介

 

   

※次回プログラム 第10回 「赤線を知らない子供たち」