恒例の、2012年度の私の選んだワーストテンを発表します。例年の通り、単に出来の悪い作品よりも、期待している作家がその期待を大きく裏切った場合に、厳しく採点しているケースがあります。対象期間はベスト20と同様、'2012年1月〜12月大阪公開作品。なお、僅か(今年度は1作品)しかありませんが、ベスト20と同様、アンダーライン付の作品は、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
映画 ひみつのアッコちゃん 川村 泰祐
スノーホワイト ルパート・サンダーズ
北のカナリアたち 阪本 順治
ボーン・レガシー トニー・ギルロイ
おかえり、はやぶさ (3D) 本木 克英
ジョン・カーター アンドリュー・スタントン
ディクテーター 身元不明でニューヨーク ラリー・チャールズ
シャドー・チェイサー マブルク・エル・メクリ
月光ノ仮面 板尾 創路
10 メリダとおそろしの森 マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン
ヴァンパイア 岩井 俊二

 

 1位は「映画 ひみつのアッコちゃん」。この映画の一番の問題は、“誰に見せる映画なのか”という点である。当然それは、原作の設定である魔法で願いがかなう、というおとぎ話のような内容からして、小学生以下の子供であるはずである。ところがお話は、「企業乗っ取り」という、大人のドロドロした話にほぼ終始する。これは子供には不向きで判りにくい。ましてや「株主総会」だの「筆頭株主」だの、子供にはまったく意味不明の用語が飛び出しては何がなんだかチンプンカンプンである。だから何で困ってるのか、どうやれば悪い奴に勝てるのか、という肝心の話が全然読めなくなる。子供をほったらかしのストーリーにした時点でアウトである。多分小さな子供連れで見に来た親は困っただろう(子供に横で説明すれば煩くて周囲に迷惑だし、多分それでも判らないだろう)。かといって、大人が見るには話がチャチすぎる。また、小学生のアッコが塾と称して会社勤めしてるのだが、連日朝早く出かけて、夜遅く帰るアッコに親が無頓着過ぎる。普通は夜には親が迎えに行ったり、時には塾に電話して状況を確認したりするだろう。ついでに言うと、今の株主総会は出席しない株主から委任状を多数集めており、議題にない動議が出たり、議案が否決されたりはほぼ出来なくなっている。そういう細部もいいかげんである。
 宮崎駿監督のアニメや、「ドラえもん」が好例だが、きちんと子供の目線で夢を追い求めた作品は、大人が見ても必ず感動出来る作品になるのである。細かい突っ込みどころは許せるとしても、小学生が主人公なのに、大人の欲が絡んだ難しい話を中途半端に作って子供を置き去りにした製作者の基本姿勢は、厳しく責めておきたい。

 2位の「スノーホワイト」は、グリム童話「白雪姫」が原作のはずだが、これも1位と同様、子供を無視した大人の発想で作られている。それでもお話として面白ければいいのだが、なんともつまらない。白雪姫が甲冑に身を包んで敵の軍勢と大激戦を繰り広げる?「ジャンヌ・ダルク」ですか。それに、白雪姫を演じたクリステン・スチュアートが、姫に必要な清楚さ、可憐さ、気品がいずれも欠けているのはミスキャスト。シャーリーズ・セロンの女王の方が美しく見えたんじゃマズいでしょう。また、原作にない狩人(映画の原題も「白雪姫と狩人」)を登場させているのだが、王子がいるのだから何の為に出したのか分からない。中途半端な三角関係にして話をややこしくしてるだけ。ヒドいのは、森の中で唐突に“シシ神”のようなものが出てくるが、結局何の関係もなかった。オマージュのつもりなのだろうか。出せばいいってもんじゃないでしょう。とにかくいろんな面で行き当たりばったり。ターセム・シン監督の「白雪姫と魔法の鏡」の方がずっと面白くて楽しめた。

 3位は北のカナリアたち」。阪本順治監督は、脚本が良ければ傑作を作るが、出来の悪い脚本だとやはり酷い作品になってしまう。「座頭市 The Last」しかり。やはり映画は脚本次第。
 設定は悪くないのだが、一番いけないのは、各人物の掘り下げが足りないし、行動原理に説得力がまるでない点。まず主人公はる(吉永小百合)、死期の近い夫がいるのに、何で赤の他人に構うのか。夫につきっきりでいるべき。その相手仲村トオルも人物像が浅過ぎる。で、不倫を疑われて島を追われるという流れだが、てっきりそれは誤解だった、という結末かと思ったら、本当に不倫だったのには唖然。危険な崖の近くで子供たちとバーベキューやるし(もっと野原とかでやりなさい)、夫はバーベキュー途中で唐突にトオルに会って来いと言うし、生徒の引率責任がある小百合は危険な場所に生徒放ったらかしてまっ昼間にトオルとキスしてるし、およそ行動に無理あり過ぎ。しかも殺人で逃亡してる生徒の逃亡幇助みたいな事やってるし。そりゃ犯罪でしょ。で、都合よく甘い刑事がいて手錠はずして全員で合唱…。刑事にダメと言われたらどうする気だったんでしょうね(その確率は遥かに高い)。まあ突っ込みどころを挙げればキリがないが、とにかく主人公に全然共感出来ないのは一番問題。ついでに言うと、20年経過してるのに、小百合も父親役の里見浩太朗も全然老けてないのはメイク手抜き。苦労した60歳の女性はもっと目尻も弛んだりするよ。里見に至っては85歳くらいになってるはずだから、大滝秀治さんくらいに老けてないと(笑)。声だって張りがあり過ぎる。演技指導してるのだろうか。
 それにしても脚本の那須真知子、「デビルマン」、「北の零年」というワースト作品を8年前に連発して信頼を失墜、それ以来の執筆だが、懲りてるはずなのに何で東映は又も起用したのだろう。案の定だ。もうこの人には書かせない方がいいと思いますよ。

 4位ボーン・レガシーは作品評参照。好評の「ボーン」3部作にあやかろうとした魂胆が見え見え。レガシー(遺産)食い潰し映画でした。

 5位おかえり、はやぶさ」(3D)。小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を描いた作品は既に3本作られてて食傷気味。目先を変えようとしたのか、家族のドラマを盛り込んでるのだが、このドラマ部分があまりに芝居じみてて凡庸。観客はそんなお芝居を見に来たわけじゃないだろうに。本木演出がまたタルくて盛り上がりもない。3Dが売りだが、ホームドラマを3Dで見ても仕方ないだろう(笑)。高い料金払わされた分だけ、不満度も上がった。

 6位ジョン・カーター」。巨額製作費をかけて最も大コケした作品だそうだが、確かに、主演俳優もストーリーの盛り上がりもいま一つ。原作は有名なE・R・バローズの「火星のプリンセス」だが、小説としては面白くても、映像化すると面白くなくなるタイプの作品があって、これはその例に当てはまってしまったようだ。引力が少ない為、飛び上がると遠くまで飛ぶという設定は文章では違和感ないが、映像にすると大して面白くない。しかもそれでヒーローになれる訳もない。監督は「ウォーリー」のアンドリュー・スタントンだが、実写監督には荷が重過ぎたか。いっそアニメで作ればまだ見れたのではないか。

 7位ディクテーター 身元不明でニューヨーク」。こういうバカバカしいお話は好きな方なのだが、主演のサシャ・バロン・コーエンが下品だし、思いつきの寒いギャグにはほとんど笑えなかった。笑いには品が必要ですぞ。独裁者をネタにするなら、権力者の愚かしさを痛烈に批判すべきだろう。自分が主役のせいか、身代わりを立てられ放り出されてからは、冒頭の傍若無人ぶりとはうって変って、必死に頑張るという中途半端なキャラクターにはガッカリ。面白ければB級おバカ映画ベストテンに入れてもよかったのだが。笑いと毒気の失速が残念。

 8位シャドー・チェイサー。冒頭はヒッチコック型巻き込まれミステリー・タッチで面白くなりそうだと思ったのだが、後の話の繋ぎ方が荒っぽい。脚本が雑。せっかくブルース・ウィリスとシガニー・ウィーバーが出てるのに生かせていない。ウィリスなんてすぐ引っ込んでしまう。そもそも、素人の若者がプロのスパイ組織と対等に渡り合って勝ってしまう展開があり得ない。マドリードでのカー・チェイスはそれなりの見どころだが、観終わってカー・チェイスしか記憶に残っていないのが出来の悪い証拠。

 9位月光ノ仮面」。板尾創路監督は、デビュー作「板尾創路の脱獄王」が面白かったので期待していたのだが、これはまた不思議な(難解な)映画を作ったものだ。
 難解映画と言うものは結構あって、好みにもよるが、中にはハマってしまう作品だってある。「2001年宇宙の旅」や鈴木清順監督「陽炎座」なんかは大好きな作品だ。これらは話は判り難くても、シュールな映像美がとても魅力的で、観直す度に新しい発見もある。本作は残念ながらそうした魅力に欠けている。落語の「粗忽長屋」をベースにしてると聞くが、本作はベースにしたと言うより、“落語”と“人違い”という2つの共通要素があるだけで、原典の持つブラックな可笑しみはここにはない。“自分は誰なのか、生きているのか死んでいるのか”という面白そうなテーマに取り組もうとした、その意欲は買うが、意余って力足りず、失速してしまったようだ。
 チャレンジするのはいい事で、悪いとは言わないが、まだまだ監督としては初心者なのだから、まずは堅実に監督としての腕を磨いてからにして欲しい。板尾監督には期待しているからこそ、苦言を呈したい。

 10位メリダとおそろしの森。ワーストというほどではないのだが、毎回クオリティの高い作品を連打して来たピクサー作品にしては珍しく平凡な出来であり、期待が高い故の評価である。ピクサー作品の魅力、勇気、友情、家族愛、といった感動の要素が本作は希薄で、母親がクマにさせられ、元に戻す為にドタバタしてるだけで、どこか中途半端。これは監督が途中で交代したせいもあるのかも知れない。メリダのちぢれ毛の表現など、CG映像のレベルは相変わらず見事なのだが。

 次点ヴァンパイア。岩井俊二も私がずっと期待している監督なのだが、これはちょっと合わなかった。一味変わった吸血鬼ものを作ろうとしてはいるのだが、ドラマとしての起伏に乏しく、フラットなままで終わった。何より、血を求めずにいられないヴァンパイアの悲しみが伝わって来ないのは致命的。映像はいつもながら美しいのだが。

 
 今回は珍しく、洋画が6本も入っている。ただ、明らかに駄作の臭いがした「貞子3D」とか「アナザー Another」とか、予告編で観る気をなくした「ホタルノヒカリ」とかは観ていないので、決して日本映画に駄作が少なかったわけではないと思いますよ。

 

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