恒例の、2008年度の私の選んだワーストテンを発表します。例年の通り、単に出来の悪い作品よりも、期待している作家がその期待を大きく裏切った場合に、厳しく採点しているケースがあります。対象期間はベスト20と同様、'2008年1月〜12月大阪公開作品。なお、ベスト20と同様、アンダーライン付の作品名なら、クリックすれば作品批評にジャンプします (戻る場合はベスト20と同様、ツールバーの「戻る」を使用してください)。 では発表します。

順位 作  品  名 監    督
少林少女 本広 克行
L Change The WorLd 中田 秀夫
252 -生存者あり- 水田 伸生
D-WARS ディー・ウォーズ シム・ヒョンレ
ICHI 曽利 文彦
僕の彼女はサイボーグ クァク・ジェヨン
まぼろしの邪馬台国 堤 幸彦
ゲット スマート ピーター・シーガル
紀元前一万年 ローランド・エメリッヒ
10 ウォーター・ホース ジェイ・ラッセル
地球が静止する日 スコット・デリクソン

 

 ワースト・ワンはぶっちぎり、「少林少女」。いろんなワーストテンを見ても、どこでも軒並み1位を独占。とにかく酷過ぎる。詳細は作品評を読んで欲しいが、安直な企画、最低の脚本(十川誠志)、ほとんど投げやりの気合のこもってない演出(本広克行)…と、どれも徹底的にダメ。そのダメな部分をロクに軌道修正もしないプロデューサー(フジTV・亀山千広)も同罪。こんな出来そこない作品が、テレビ局の大量宣伝でそこそこ興行的に成功してしまう現状にもうんざりしてしまう。困ったものである。
蛇足…作品評で、「日本沈没」「どろろ」に続き、「映画秘宝」誌において柴咲コウ主演作が3年連続ワーストワンになるかも…と書いたが、まさしくその通りになってしまった(笑)。

 2位の「L Change The WorLd」も作品評参照。結構面白かった佳作「DEATH NOTE」とは似ても似つかぬ駄作である。3位の「252 -生存者あり-」も突っ込みどころ満載で、ご都合不義の典型。感動作になるはずが、ラストでは失笑の渦。で、よく考えたら2、3位とも日テレ製作、ワーナー配給。5位の「ICHI」もワーナー配給。洋画ではまあまあなのに、日本映画に出資したらどれもロクなもんしか出来ないのは何故か、真剣に見直すべきだろう。

これら1〜3位作品に共通するのは、脚本の酷さである。黒澤明監督は「いい脚本からはそこそいい作品が生まれるが、ダメな脚本は誰が撮ってもダメな作品にしかならない」と言っている。ヒッチコックによれば、脚本の出来が良ければ、映画は90%完成したも同然だそうである。監督の人材は不足していないと思うので、日本映画の為には、脚本家の人材をいかに育成するかにかかっていると思う。脚本家の方も、優れた先輩たちの脚本を教材として切磋琢磨して欲しいものである。

 4位の「D-WARS ディー・ウォーズ」は韓国製怪獣映画。…のはずが、500年昔の韓国の伝説に登場するドラゴンや邪悪な獣や当時のお姫様の子孫や正義の戦士の生まれ変わり…等が、何故かみーんなロサンゼルスに現れる。で、「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するのとそっくりなクリーチャーも脈絡なく現れ、もう収拾がつかなくなる(笑)。酷いのは、主人公であるはずの男の子が、結局ほとんど活躍しない。これも脚本がムチャクチャ。CG・VFXはハイレベルになったが、お話はダメダメ…というのは日本だけの傾向ではないようである(笑)。

 5位の「ICHI」、6位の「僕の彼女はサイボーグ」、どちらも詳細は作品評参照。主演はどちらも綾瀬はるかなのは意識したわけではない。題材・企画は悪くないだけに、もっとお話を丁寧に作って欲しい。

 7位「まぼろしの邪馬台国」。作品内容よりも、チケットショップで前売券が100円で売られていた…という事で話題になった(笑)。内容にしても、原作者・宮崎康平氏の実名を使っているのに、事実からあまりに離れ過ぎているストーリーも問題(宮崎氏は島原交通の社長ではなく重役。和子さんと知り合った時には既に離婚しており、昭和32年に和子さんと正式に結婚している)。竹中直人の、ユーモアとおふざけの違いが分かっていない盲人演技はなんとかならなかったのか。竹中の幻想の中で、卑弥呼の顔が小百合なのは、サービスのつもりなのか。ラストの、前妻が葬儀にやって来る取ってつけたお涙頂戴シーンはただシラケるばかり。…それにしても、吉永小百合が東映作品に主演すると、どうしていつもワースト作品になってしまうのだろうか。

 8位「ゲット スマート」。その昔、テレビ放映されていた、コメディ版スパイ活劇のいまさらの劇場版。しかしまあ、いろいろギャグはあるものの、ちっとも笑えない。そもそもオリジナルは、007を中心とするスパイ活劇大ブーム時代の只中において、それらをからかい、オチョくっているからこその面白さであって、冷戦もスパイ・アクション・ブームも終わり、007も今や単なる肉体アクション活劇になってしまった現代では存在意義もない。主演のスティーヴ・カレルも、顔付きが真面目過ぎてドジなダメ・スパイには見えないし、演出も、たまにギャグ、時にシリアス・アクションになったりでポイントが定まらない。コメディにするなら、「オースティン・パワーズ」くらいに開き直らないと面白くならないだろう。

 9位「紀元前1万年」。「スター・ゲイト」、「デイ・アフター・トゥモロー」等のローランド・エメリッヒ監督作。いつもながらVFXは凄いのだが、お話は相変わらずショボい。この人の作品はいつも、派手なVFXをどう網羅して見せ場を繋ぐか…という所ばかり先に頭が行ってて、お話は後から考えよう…という作り方ばっかりやってる気がする。で、観終わってVFX以外何にも印象に残っていない。ま、こっちも全然期待してませんけどね(笑)。

 10位「ウォーター・ホース」スコットランド、ネス湖で目撃されたとされる、伝説のネッシーを題材に選んだ着想はいいのだが、お話をひねり過ぎ。あの有名なネッシーの写真が、実は捏造だった…という実際のエピソードも出て来るのだが、映画の中でネッシーは実際に登場しているのだから、そんなエピソードはどうでもいいはず。あの写真を本物だと信じ続けた少年の夢が遂に実現した…とする方がよっぽどマシ。うまく作れば、「E.T.」並みの感動のファンタジーになったはずなのに、さっぱり感動が盛り上がらない。軍隊の砲撃の中、ネッシーが少年を乗せて逃げ回る終盤はもうムチャクチャ。脚本がやっぱりダメなんでしょうね。

 次点「地球が静止する日」。50年前の古典的名作(ロバート・ワイズ監督)のリメイク。これも50年前に比べてVFXは格段に派手になってるのに、お話はつまらない(こんなのばっかりだ(笑))。前作は、地球人に「核戦争ばかりやってると人類は滅亡しますよ」と警告にやって来た、いわゆる友好的宇宙人のお話(スピルバーグの「未知との遭遇」に多大な影響を与えた)だったはずなのに、この宇宙人は人類を滅亡させようとする。その根拠が、70年も地球で調査をして来た潜入調査員から得た結論であった…はずなのに、宇宙人(キアヌ)はたった1組の親子としばらく一緒にいただけで、その重大な作戦を、自分一人の判断で覆してしまうのだからいいかげんなもんである(旧作では気付かなかったが、乗組員がなんで1人しかいないんだろう?)。大山鳴動してネズミ一匹…のような腰砕けの映画でありました。 

 
 昨年は、10本中8本が日本映画だったが、今年は6本。ただ日本資本とは言え、「僕の彼女はサイボーグ」の監督は韓国なので、実質は5本か。しかし、上位3本は圧倒的にヒド過ぎる。脚本レベルで、このヒドさが見抜けないようでは何の為のプロデューサーか。また、いずれも製作主体はテレビ局(フジ、日テレ)。もう両方のテレビ局とも、台風の高波でとっとと潰れてくれ、と言いたい(笑)。

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